7月後半にちょっと話題になった「週刊ダイヤモンド」の不妊治療特集の医療機関実績一覧。数字の羅列ではちょっと見づらいし比較もできないなと思ったので一部を引用させて頂きグラフにしてみました。
医療機関が少なくて有名な所もチラホラないのがさみしいものの、こういうデータが一挙に見られるのは本当にありがたいのでエサとしてバクバク頂いてみました。
治療中の人たちはやはり気になる情報なので、どんな形であれこういった最新情報のまとめをしてくださった週刊ダイヤモンド編集部の皆さんに感謝申し上げます。
グラフを見る上での注意点
言わずもがなではありますが、念のため。
- こちらに掲載しているのは調査対象の医療機関のみになりますので、下記地域での全ての不妊治療クリニックが表出されているわけではございません。
- また、妊娠率などもあくまでも全体集計であり、通院している患者さんの年齢層や治療歴による一般的な妊娠率の差は考慮されておりませんので、一概に治療成績を語るものではございません。
- 妊娠率は累計ではなく、2017年1年間の実績の方を用いています。
- 対象地域において凍結胚移植が年間100件以上のクリニックに限定いたしました。
- 培養士数25名以上のクリニックはグラフに入らないため縮尺が異なります(加藤LCは60名、英WCは34名、田園調布LCは28名です)
- 医療機関名称は正式ではございません、また一部LC(レディスクリニック)、WC(ウィメンズクリニック)などに表記を省略させていただいております。
ではさっそくグラフを見てみましょう
(↓タイトルの「週刊」が「週間」と間違っています!申し訳ありません)
*「週刊ダイヤモンド2018年7月21日号」の記事内一部データを基にメアリーがグラフを作成しました。
- 横X軸は胚培養士の数で、これは治療実施件数(移植数)との相関係数が0.9とめちゃ高かったのでクリニックの規模を表すために採用しました。
- 縦Y軸は凍結胚移植数に対する妊娠数を妊娠率として表しました。
- 円の大きさZ軸はIVFの費用を使いましたがクリニックにより手技代だけにしているところ、薬剤費まで含めた総額としているところなどマチマチのようで、あまり参考にはなりません。(ここは週刊ダイヤモンドさんにしっかり定義して調査して欲しかったところですね・・・)
このグラフから読み取れること
- 基本的に大規模クリニックは数件で、全体的には規模・妊娠率ともに同程度のクリニックがとても多い
- 神戸ARTレディスクリニックの凍結胚移植に対する妊娠率がめちゃくちゃ高い(これは着床前診断(着床前スクリーニング/PGS)の功績と想定されますね)
- それ以外の規模の大きい(培養士数の多い)クリニックの妊娠率はどこもそれほど変わらない(それよりも採卵に対する妊娠率の方が重要ですよね)
- 地域による偏向はないように見えるが、関西の方がやや移植に対する妊娠率は高めか・・・?(母数が少ないので分散しないだけだと思いますが)
- 全体的な凍結胚移植に対する妊娠率は35%前後におさまっている
それにしても大谷先生の所(神戸ARTレディスクリニック)の凍結胚に対する妊娠数の多さよ…単純計算なら妊娠率7割ですぜ…。これを着床前診断の功績と言わず何というのか。なぜ厚労省や医師会は動かないのか…。#週刊ダイヤモンド #不妊治療最前線
— Mary (@maryism_mary) 2018年7月22日
私の言いたい事はもう、これがほぼ全てですね・・・。
ホントはクリニック別のコレが知りたい!!
このデータに決定的にかけているのは「採卵実施回数」「採卵数」ですよね。
高度生殖医療の根幹は「胚の培養」であって、採卵数に対する「胚盤胞凍結率」そして「妊娠率」がなければ、本来のそのクリニックの実力を評価することはできないと思います。
しかも、本当に評価するならば、年齢やAMH区分別・刺激法別の採卵回数、採卵数、凍結初期胚数、凍結胚盤胞数、凍結胚数移植数、妊娠数くらいは分からないと、正直一覧にして比較する意味はないと思います。
そこまでして初めて妊娠率は高いけど30代しか見てないね、とか、妊娠率は低いけど低AMHの人の妊娠率は高いとか、そういった特徴や得意領域まで見えるようになるのだと思います。
そういうデータって病院側も出したがらないのでしょうねぇ・・・。たまにWEBで公表している所もありますが、出さないクリニックってそんなにやましいんですかね…(爆)
実は数ヶ月前、日本産婦人科学会の事務局に医療機関が提出するこれらの実績を開示してもらえないか掛け合ったのですが、医師側からの許可が下りずNGでした。
産婦人科学会ではこういった高度生殖医療に関する全国統計集を作っているので、本当は学会所属の場合にはちゃんと各医療機関からデータが提出されており、医療機関別になっていることはわかっているのだが・・・・!(なんで公表しないんだろーなーーーー > もちろん成績が患者獲得に直結するようになれば経営状態にも影響し得るということなんでしょうけどね)
作業後記
データ化したいと思って雑誌をOCRで読み込ませてみたんですけどね、細かすぎてほとんど無理でしたね。。よって手作業で入力しましたので、全国はカバーできず東京・大阪だけになってしまいました。もちろん著作権の問題もあり得るので、全国分のデータを利用させていただく場合は転載の許可をいただく必要があるでしょうが・・。
実際どの項目を軸にするかでデータの見方もいろいろありそうなので違う軸で捉えられないかもぼちぼち考えてみたいと思います。
もっとリッチな情報だったら気合入れて全国やりたいんですけどね~!不妊治療の実施機関は、もっと情報開示せよー!!!