最近、高齢者の医療費という問題が徐々にクローズアップされてきていると感じますので、ついでっぽくエンターテイメント小説をご紹介させてください。
本日ご紹介する本
なんともショッキングなタイトルの「七十歳死亡法案、可決」すごい大胆な事言ったなと思いましたが、なんとなく誰も口にできなかったことを小説として具現化したという点に個人的には拍手を送りたいです。
全然社会派小説とかじゃないので面白く読めます。
こんなこと、エンタメでしか扱えないし、たぶんこの小説がメディアで大々的に取り上げられることはないでしょう。(どれだけフィクションだと言ってもすごい勢いでクレーム来そうですからね・・・(笑))

- 作者: 垣谷美雨
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/02/10
- メディア: 文庫
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あらすじ(紹介文)
2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。
2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は「やっと自由になれる」と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。
我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。
なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。
「家族なんてろくなもんじゃない」、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて...。すぐそこに迫る現実を生々しく描く。注目作家、渾身の書き下ろし小説。
感想
あまりに非人道的で馬鹿げているような雰囲気ですが、実際の生活の描写はものすごいリアルで、ショッキングなタイトルとは裏腹なスッキリした読後感。いい意味でも悪い意味でもしっかりフィクションでした。
現代の感覚だと70歳は若すぎますが、しかし、ある一定の年齢までしか生きられないとわかると人はどうなるのか?逆にそうではない環境になると、どうなるのか?というのがとても「ありそう」「わかる気がする」という感覚になりました。
これ自体はもちろん単なるエンタメ小説、完全なフィクションではありますが、国が抱える課題としては事実。
そこが、軽いタッチの小説のわりに、考えされられるというか、妙に裏側にすごく深い何かがあるような気さえしてしまう、不思議な印象を受けました。
私は結構こういう、なさそうでありそうなぶっ飛んだ設定とか、全体的にはスッキリしたまとめのフィクションが好きなので、いいなって思いました。
おまけ
ちなみに著者の垣谷美雨さんの他著もご紹介。
こういう類の作品を書かれている方なのです!「老後の資金がありません」もどこの家でもありそうなエピソード満載で笑えました。シビアな現実をほっこりする感じにまとめるのが本当に上手。
定年オヤジ改造計画も文庫化待ちです(笑)