日本の不妊治療は実際のところ本当にイマイチなのか?世界と比較してみたら何か見えるものがあるかもしれない、ということでやってみました。
この記事はオマージュ企画です
先日拝読したこちらの書にインパイアされたオマージュ企画を考えました。
ちなみに、この本での医療の評価項目はこんな感じでした。
【出典:日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一 P163より抜粋】
18項目を評価したところ、日本の医療は10勝5敗3分で総合的には世界一だ、というわけです。
正直なところ、項目の選び方があまりMECEじゃないし、ちょっと意図的なものを感じるところはあるものの、概ね確かにそうだなという印象ではありました。
これを不妊治療でやってみたら面白いかもな~ということで発動した企画なわけです。今回は、医療の中身だけというよりは、不妊治療を取り巻く環境全体で評価してみました。
日本の不妊治療は4勝11敗4分けで負け越し!
以下の基準で勝敗を付けました。
- 世界最高レベル!というものが勝ち(○)
- どっちもどっち!が引き分け(△)
- 明らかに負けている国があるというものは負け(×)
結果、4勝11敗4分けで圧倒的負け越しでした。
え、めちゃくちゃ弱小だったよ・・・。
世界大会とかだったらグループリーグ再下位争いでしょうな。私が言うのもなんだけど、こうして並べてみるまでは正直もう少しマシだと思ってましたわ。
(作ってみて思ったけどこれMECEって証明するの難しいな・・)
各勝負の根拠
項目1.医療レベル
技術レベル、スタッフのレベルという意味では他の診療科に劣らずここはかなり優れていると言って良いと思います(今のところは)。
日本のクリニックが世界で初めて成功させた技術も多いです。クリニック間の格差は否めないものの、平均点は高いという感じでしょう。
一方で合理的な治療ガイドライン(採卵時の低刺激周期は条件を満たした患者にしか実施してはいけない、など)が定められていない事、それらに起因して体外受精の成功率が先進国最低レベルであることは紛れもない事実ですね。
項目2. 治療選択肢
ここは全敗。
日本は治療の選択肢がないない尽くしで、一つも勝てないと思いますね。
特に体外受精以降は、何度移植が陰性でも採卵と移植を淡々と繰り返せばいつかは上手くいくだろう、それしかないと考える医師がとても多い。
患者からしたら金銭的にも精神的にもそれは極力避けたいのに、繰り返すしか手がないと言われてしまうのです。
確実な正解など存在しない世界で、実際に子どもに関して誰かが責任を取ってくれるわけではないのだから、どの選択をするかは個人に任せられるべきであり、あらゆる選択肢を用意するというのがべき論だと思いますけどね…。
項目3. 治療の身近さ
ここは日本が優れている点の一つだと思います。
アクセスのしやすさは地域等によってかなり差があるので△としましたが、都市部に限って言えば○を付けられると思います。
待ち時間も平均的な国際比較でいえば◯でもいいかなと思いましたが、やはりクリニックによってはかなりの問題ではあって優れているとも言いきれないので引き分けに。
項目4. 医療の値段
日本では体外受精の場合、採卵から移植までの1サイクルで50万円~100万円ほどかかるのが一般的です。非常に高額ですが、これでも相対的な「治療費・薬剤費」は海外よりは安いと言われています。
しかし、自己負担という点では治療費が無償化されていたり保険適用の国がたくさん存在する中ではやはり×ですね。
項目5. 社会的な環境
ここも基本は負けっぱなしな部分だと思います。
仕事の両立に関しては理解のある国もあるようなので×かなと思いましたが、調べてみると英語圏では結構苦労している趣旨の記事がたくさん出てきたので同レベルとみなしました。
この中でも特に深刻なのは養子や法律婚以外に対する体制の整備や社会的な理解であろうと思います。
各国の事情については調べ切れてない部分もあるので、あくまで参考程度に捉えていただきたいものの、大まかにはこんな感じなのかな~。違和感があったらぜひ教えてくださいね。
日本の不妊治療環境を世界トップレベルに上げるには?
少子化が深刻な日本の秘策として、不妊治療環境を世界トップレベルに押し上げるというやり方は十分考えられると思います。
それには今、×が付いている項目を○にしていけばいいわけですよね。
やるべきことはたくさんあるように見えますが、これらは他の国では実現できているところも多い。それに、不妊治療以外の医療領域で言えば日本が勝っている部分がたくさんあることなので、決して机上の空論ではないことばかりだと思うんです。
もちろん一定のリソースは必要だけど、鶴の一声で動き出せるものも多いし、見てきたように海外での先進事例があるものばかりなのでいくらでもいいところを参考に、課題も同時に検討できるとても取り組みやすい環境なんですよ。
逆になんでやらないの? やらない理由がなくない?
少子化待ったなしの状況でこんなに迷いようもないほど自明なのになぁ、一患者としてというより、少子化の影響が直撃するだろう現役世代の1人として私はそう感じています。