めありずむ

不妊治療・育児・Mr.Children・手帳・雑記ブログ

不妊治療のやめ時について考えてみた

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Merry Christmas ! 不妊治療に振り回された2018年も暮れようとしています。締めくくりにこんな話題かと思われそうですが(笑)自分の治療のやめ時について考えてみました。*あくまで個人の状況に照らして考えたもので治療をやめることを推奨する意図ではございません。

35歳以下なら期待できるなんて本当か?

おそらくそんなこと言ってないで、「1日でも若いうちにたくさん採卵を」という人もいるだろう。

でも、私はもう5年もわりとマジメに妊活→不妊治療してきた。着床もした。そして今は、ただ採卵と移植を繰り返していこうという気にはなれなくなった。

「まだ35歳なら全然大丈夫ですよ!」なんて言った医師は信用ならないと思っている。それならば私の5年間をどう説明してくれるんだ。

「卵子の質(染色体正常率)」というものが本当に年齢相応ならば、1ヶ月でも早く採卵に勤しむべきかもしれないけれど、同年代の人も年上の人もぽんぽん陽性を勝ち取っていく中で、30代前半の私には5年間もの間、奇跡は起こっていないし、相互転座がある時点で染色体正常率は年齢+5~10歳の可能性もある。

このまま治療を継続すべきか、甚だ疑問である。

(もちろんそこが判明していない人はとりあえず1日でも若いうちに治療を始めるべきだとは思うけど)

冷静に考えるとどれくらいの投資が必要なのか?

確率論の話をするならば、私の場合はそもそも胚盤胞到達率が悪い。

ここから先、高刺激で4回も5回も採卵しても、PGT-Aを受けるに値するほどの受精卵すら得られない可能性もかなりある。

【参考論文】

Planning for the future: how many eggs do patients need to harvest to achieve their fertility goals?

これまでの治療成績と相互転座での染色体正常率を考えると、100個くらい採卵を目指す必要があるかも。

それなら、7~9回程度の採卵が必要だろう。高刺激なら金額にすれば4-500万円は下らない。10個の胚盤胞が出来たとして、PGT-Aと移植だけでも、最低100万円は必要だろう。そしておそらく、2-3年の歳月を必要とするに違いない。

それだけの時間と追加で500万円以上(総額800万円)の費用を捧げてもなお、出産できる保障はないのだ。

いつまで治療を続けるのか?

だから、自分達で線を引かなくてはいけない、と思う。 「子ども」という存在に頼らずとも幸せに生きる方法としっかり向き合う必要がある。

そう強く思わされたのは、この記事を読んだことが影響している。

もちろん、個人の、その夫婦の考え方次第だと思うけれど、私は不妊治療だけに時間とお金と精神を奪われる30代は「もったいないな」という感覚がある。私の人生にとって、子どもは唯一のシンボルではないはずなのだ。

要は、5年も10年もの歳月と財産を治療に費やして、それでも授からなかった時、その時間が有意義なものだったと胸を張れる自信が私にはない。

それがある人は頑張れば良いのだけど、私には無理だなと感じる。上記のインタビューの女性医師と感覚的には近い。

それくらいただ消耗するだけの行為なのが不妊治療だと思っている。もちろん、短期間で出産できた方には希望の光だろうけれど、そうではない人もたくさんいるのが現実だ。(高齢ではなくてもね)

私の人生で叶えたいことは「子ども」だけではないし、他にもやりたいことがたくさんあるのだ。これまでに使ったものは仕方がない。自分が子どもを産めないと理解するのに必要なリソースだった。しかし、ここから先は違う。 

私達の決断を鈍らせるバイアス達

では、不妊治療をやめるという決断の一体何が難しいのか・・・?人間の判断を鈍らせるバイアスを見てみよう。

「ここまでやってきたのだから」というサンクコストバイアス

治療をやめたくないと考える理由のひとつが「○年間もつらい治療をしてきたのに、それを中止するとこれまでの治療が無駄になる」という思い。

サンクコストとは埋没した費用という意味で、過去に支払った費用や努力が戻ってこないもののことを指す。治療を継続すれば既に支払った費用や努力が戻ってくるというのは実際は間違いで、本来比較すべきなのは治療を続けたときの満足感と他のことに費やしたときの満足感のはずだ。

今の時点で考えるべきは「これから先」のことであって、過去ではない。その判断を鈍らせてしまうものがあることを知っておくほうが良さそうだ。

「まだ大丈夫、頑張れる」という現状維持バイアス

現在の治療法を維持したいというのは現状維持バイアスが働いているからということらしい。これは、現在の状態を変えることを私達が「損失」とみなしてしまうことが原因の一つと言われている。

まだ希望を持って努力し続けている状態を変えてしまうことに対して、恐怖感を持つのが常のようだ。これも心理的にバイアスがかかっていることを自覚した方が良さそう。

「今は決めたくない」という現在バイアス

現在バイアスは目の前の事を過大評価してしまうとかいろいろあるけど、ここでは重要な決定を先送りしたくない、人間には「後回し癖」があるという説。

自分の決断が何か大きなことを意味する場合、とにかくそこから逃げようとしてしまうらしい。なるほど、先送りしてもその苦痛はずっと消えないのにね。

「私でも妊娠できた」という広告を優先してしまう利用可能性ヒューリスティック

「近道による意思決定」という意味で、医学的に証明された治療法よりも、身近で目立つ情報を優先して合理性に欠ける意思決定をしてしまうことを行動経済学的にはこう言うらしい。

例えば自分よりも厳しそうな状況の43歳の方が「この方法で半年で妊娠できました!」と謳っている民間療法があったとして、医学的なエビデンスに関係なくそれを試してみてから決めよう!と合理性に欠けるアクションを取ってしまうこと。

不妊治療やがん治療ではよくある話のようだ。

【参考文献】 

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

 

自分の状況を把握した上で夫婦で話し合っておくのは良いことかも

どのバイアスも、あぁわかる、と思った。人間の判断力はとことん合理性に欠ける。

しかし、不妊治療は根性論でもキレイごとでもない。 それに、今の私の治療を取り巻く環境で明るい話題もない。

私達夫婦の場合、陰性の度にいろいろ話し合ってきたけれど、2019年に別の病院で高刺激にチャレンジする可能性はあるが、それを最後にステップダウンか治療を終了しようという方向になってきている(決着はついていない)。

ただ、どんな形であっても38歳までで治療を辞めて、他の生き方にシフトしようというのは二人の間で合意している。そう決めてから、「気」は重いことには変わりないけれど少し楽になった。

基準は年齢でも回数でも金額でも構わない。

治療のやめ時を考えておくことは、実際に治療をやめるのとは違うし、諦めるわけでもないし、決して悪くないような気がする。