不妊治療費を全面的に保険適用すべきという話をすると、必ず湧いてくる所謂「クソリプ(言い方は好きじゃないが)」がめちゃくちゃなので、それににトーンを合わせて回答します。一部失礼な言い回しをしている部分がございます、お目汚しお許しくださいませ。
また、この内容はすべて個人の見解です。
- 実子にこだわらず養子縁組すればいい
- 不妊治療に出すほどの財源がない
- 産めない人より産める人を支援したほうが良い
- 不妊は高齢が原因だから自己責任
- 不妊治療する家庭は経済強者だから支援なんて必要ない
- 不妊治療費で困る家庭は子育てなんかできない
- 結局お金ほしいだけでしょ?
- 生命に関わる病気じゃないから
- 疾病と治療法の関係が明確でない
- 先進医療みたいに成功率が低いから保険適用外でしょ?
- 保険適用になると画一的な治療しか受けられない
- 不妊治療に公的資金を入れるのは無駄遣い
- 無制限に不妊治療が受けられるのは許せない
- 生活保護の人は無償で不妊治療できるのはおかしい
- 反対するならもう少しまともに議論できる材料求ム!
実子にこだわらず養子縁組すればいい
この手の話、必ずと言っていいほど出るんですけど、一体どなたさまなんでしょうか?
まさか不妊・不育治療をしている人達がその制度を知らないとでも思ってるんでしょうか?
人がどういう家族の形を選ぶかは、他人が口出すことではありませんよ、文字通り、余計なお世話です。生殖に関しては個人に選ぶ権利があること、ご存知ないのかな?
養子縁組という制度自体は実親の養育が難しい環境にある子どもが主役ではありますし、一方で日本が異常に里親委託率が低いこともまた事実であり、里子・養子の制度が不十分であることは確かです。でもそれはまた別の議論であって、そういう問題じゃない。
また、実子ではなく養子を選択されるカップルもたくさんいますが、その道を選ぶのもその方たちの考えの結果であって、それが絶対的な正解というわけでもありませんし、悩んで悩んで選択してる人達にめっちゃ失礼だよ!
今、目の前にある生殖医療という可能性にかけて治療を選択している人たちに「養子は?」と言うのは、暗に「治療を諦めること」を示唆しているものであって、そんなものを他人に提起される筋合いはございません。養子という選択肢を考えるか、治療を継続するかは、当人が決めることで、それ以上でもそれ以下でもありません。他人の家に土足で上がるような真似、やめて頂きたい。
不妊治療に出すほどの財源がない
これ言う人、誰なの?何様なの?それってあなたの財布の話なの?日本はあなたの王国かなんかなの?
逆に質問なんですけど、政府が100%妥当で無駄のない財源の使い方をしているとでも思ってらっしゃるのでしょうか?そして、それを全て把握されてしっかり評価されて、まったく不妊治療に回せるお金はないと仰ってるんでしょうか?
だとしたら神様なのでしょうね…、様々な分野の国家予算の使い方をすべて把握して妥当性を評価できる人なんて、申し訳ないですけど全知全能でも無い限り無理だと思いますけど、何を根拠に「財源がない」と言い切れるか説明してほしいです。
そもそも、政府の答弁だって一度たりとも「財源がないから保険適用できない」と言われたことはないんですけど、それで真っ当なこと言ってるつもりになっちゃうの?
自分は思考停止しちゃって問題解決を考えることができませんって顔に書いるように見えていますよ…。
産めない人より産める人を支援したほうが良い
そもそも、産める産めないの定義って何だとお考えなのでしょう?
自然妊娠出来る人を見分けられるんでしょうか?1人目は自然妊娠で、2人目以降に不妊治療受けられる方が結構いることご存知ですよね?生殖医療が介在すれば3人出産されている方も結構いるんですけど、この方は産めない方になるんですか?そもそもそんな線引きが無意味です。
100歩譲って自然妊娠で2人産んでいる方を「産める人」と定義したとして、その方が3人目も4人目も欲しい支援できるんですか?妊娠期間だって身体はしんどいし、出産って命がけなんですよ、しかも1人育てるのにいくらかかるか理解されてます?
3人目から1千万円とか支援するなら産んでくれる人はいるでしょうが、「産める人にたくさん産んでもらおう」という発想自体が女性を産む機械という捉え方をしているようにしか思えません。はっきり言って気持ち悪いです。
生殖というのは「産みたい人が産む」というのが大前提じゃありませんか?もちろん産みたいと思う人が増える社会にすること、その支援は絶対必要だけど、論点のすり替え甚だしいのでお止めいただきたいです。
しかも、なぜどちらかしか支援できない前提になってるのか。産みたい人は何人目だって支援するんですよ、当たり前じゃないですか。産んだ人、産みたい人、産まないけど育てたい人、全部支援できるように考えるのが筋だと思いません?
どうしても区別したいなら、産めるか産めないかじゃないです、産みたいか産みたくないかです。
不妊は高齢が原因だから自己責任
この意見には3つの事実誤認がありますね。
- 年齢は不妊原因の一つではあるが唯一の原因ではない
- 実態として60~80%の当事者が30代前半までに通院や治療を開始している(調査によって多少数字は異なるが、新しい調査ほど若いうちからの治療開始が多い*1)
- 高齢になってしまった人でも選択的に年齢を重ねてから治療してるとは限らない
「卵子は老化する=染色体正常率が低下する」という事実のみに対して、なぜだか不妊原因は卵子の老化のみだ、といういきなり発想が飛躍しちゃった誤解をされてる方があまりに多いようなんですけど、それ不妊原因の一つでしかないからね。そこ、間違わないで。
実際上のグラフの調査では、30歳までに産婦人科等に通院を開始している人が半数近く、出産適齢期が25~35歳と考えるとそれ以前に通院開始している人が8割なんですよ。多くの女性が卵子の老化は知ってますから、最近は特に若年化していると思います。
でも産婦人科医の知識不足で治療に時間がかかったり、治療費の助成が少ないことで高度な治療にステップアップできなかったりして治療している間に年齢を重ねてしまうんですわ。もし体外受精の年齢が高くなっていても、本人の意思とは別の因子でそうなってしまうという不妊治療の闇も正しくご理解いただきたいものです。
これを見ても自己責任とおっしゃるならその根拠をデータで示してほしいものですな。
加えて自己責任という論点だと、例えば結婚が遅くなったとか、子どもを持ちたいと思える生活環境を整えるのに経済的に時間がかかったとして、それが簡単に自己責任などど言い切れるあなたは、社会環境の影響とか一切受けずに人生思い通りになると思ってるんですかね?
随分とおめでたいですね…。お幸せそうで何よりですが、それを他人に押し付けるのはすごく失礼だということがお分かりにならないようで大変ご愁傷様です。
不妊治療する家庭は経済強者だから支援なんて必要ない
えっ?収入と疾病って関連性あるんですか?経済弱者だと不妊にならないとでも?
本当は子どもを産みたいのに、今不妊治療を諦めてる人だってたくさんいるんですよ。
そもそも現代日本の一般的な20~30代夫婦の家計ご存知なのかな…実際、当事者によるアンケートの回答でも貯金が100万円を下回ったという家庭が約半数もありましたよね。助成金制度もスタート時点では家庭の9割をカバーできる所得制限設定にしてたらしいじゃないですか。それって、ほとんどの家庭は経済支援する必要があるというコンセンサスがあって始まってますよね?
でも、そういうデータの世界はこの議論では大して重要じゃない。
多分イメージだけで語られてるとと思いますけど、もちろん、世の中にはお金ある家庭だってそりゃありますよ。じゃあ例えば年収1億円ある人は健康保険に加入していても、病気になっても自費で払えって理論になるんですか?ならないですよね…。
収入が多ければそれに応じた保険料も税金も支払ってるんですよ。(まぁ高額所得者の税はまだ安いけどね) 妬みか嫉妬か存じませんが、日本の健康保険制度の原則から復習していただけると幸いです。
不妊治療費で困る家庭は子育てなんかできない
前提を理解されてない方もいますが、生殖医療も、他の医療と一緒なこと、お忘れじゃありません?疾病だから保険診療の範囲としてほしい、それだけのことです。
なんか前の問いと逆説的な意見なような気がしなくもないですが、そもそも、不妊治療って子育てに「追加」で掛かる費用なんですよ。
なになに、子育てされているご家庭はみんな妊娠前に200万円くらいポンっと出せるの?
もしこれが、これから出産を控えた家庭で、別の病気で1年半治療が必要になって、収入も減るのに「じゃあ200万円自費で」という状況でも、それくらいの費用出せないなら治療しなきゃいいのに、って言うんでしょうか……?
お金の話をどうしてもされたいのなら、1回50万円で治療が成功する方を例にすれば、それは22年間の教育費+養育費と比較すれば大した金額ではないと言えるかもしれません。でも、多くの方が複数回の採卵・移植を行い、平均費用は200万円、これ保育園児だったら2年分の養育費ですよ。
うちみたいに500万円以上かかった家庭だったら、すでに高校生までの教育費(すべて公立前提)をすべて払ってるのと同じですよ。
しかも原則として50歳くらいまでは年齢と共に収入は増加傾向にあるという実態を鑑みても、妊娠中や育児と違って社会的な保護がなく、不妊治療中に妻側が仕事と両立できず収入が減少してしまうという事実を見ても、子育てを始める前に、不妊治療に費用がかかりすぎてるってことなんです、子育ての前段階で数百万円の費用が必要という重みの話です。
【参考】子育て費用は総額でどれくらいかかるのか | mattoco Life
結局お金ほしいだけでしょ?
いや…お金だけの問題じゃなくて、そもそも生殖医療へのアクセスも保障されるべき権利だから言ってるんですって。
どちらかというと、そちらが勝手に「保険適用=お金」「不妊治療=お金」って一辺倒な解釈してるんじゃないですか?
お金がほしいだけなら、私達も「助成金上げて」ってお願いします、その方が正直何倍も楽ですからね。それくらいおわかりいただけるでしょうけど・・?
でも、お金だけ出してる「助成金制度」では、今の産科婦人科診療の「闇」を変えることができないから、保険診療という枠組みの中に組み入れるしかこの状況から抜け出す方法がないから、食い物にされている患者の権利を守る必要があるから、保険適用じゃないとダメだ、と言っているんです。
生命に関わる病気じゃないから
出た~。
え、まさか保険診療で受けられる病気はすべてがすべて命に関わるとでも思ってらっしゃるんですか?そんな定義誰がしたの?どこに書いてあるんですか?
健康保険法にもそんな条文は入ってませんし、厚労省もそんな説明してませんよ…。根も葉もない言説を我が物顔で言うのやめたほうがよろしいかと思います。
例えば皮膚科、眼科、耳鼻科、整形外科あたりの主疾病って、治さないと心臓止まるんですか?違いますよね、症状が辛いから治すんですよね?
少し前に湿布や花粉症薬を保険適用外にする提言が話題になりましたが、あれは生命に関わらないからじゃなくて、市販薬が医療用と同成分のもので代替出来るからというのが理由ですからね。花粉症治療の舌下法とかは別です。
さすがにこれはそろそろいい加減にしてほしいやつ。
疾病と治療法の関係が明確でない
これは主に厚労省様の答弁をクソリプ認定しちゃいます。どうもすみません。
そろそろいい加減にしてほしいんですけど、「疾病と治療法の関係がはっきりするものについては保険適用としています」というやつですが、人工授精だって体外受精だって顕微授精だって明らかにあるでしょ…。
なんで1年も2年も自然妊娠出来ないカップルが、高度不妊治療では年間6万人弱も出産できてるんですか?治療が有効だからじゃないんですか?
それともあれか、望んで苦労して疲弊したらコウノトリさんが助けてくれたとでも言うの?
例えば「ピックアップ障害」って、体外受精・顕微授精以外に有効な処置ないですよね?「受精障害」があるかどうかって、体外で受精させてみて初めて判断できるんですよね?精巣から精子を取り出すしかなかったらTESEみたいな手術してARTするしかないですよね?そしてそれらは確実に成果を上げてますよね?
これがなんで疾病と治療法の関係が明確じゃないって解釈になるんですか?
日本より保険診療における「有効性」の評価基準が厳しい欧州が軒並み体外受精も保険適用している現実を見ても、まだそんなこと言うんですか?
ただの無知晒しですよ、厚労省ほどの組織が口を揃えてこんな「ボクちゃん仕事できません」丸出しな事言うの国民として恥ずかしいので、いい加減にしていただけませんか。
先進医療みたいに成功率が低いから保険適用外でしょ?
これもなんか勘違い多いんですよねぇ。
実際のところ、個別に病院が公表している体外受精の累積分娩率って34歳以下なら70%、39歳以下でも50%程度あるんですよ。自然妊娠できなかった人でも、生殖医療でそれくらいは産めるってことなんですけど、これって成功率低いって言います?
(「日本の体外受精の成功率が低い」は1回あたりの成績のことで、治療周期数が多くなっていることに由来しますので、そこはお間違いなく)
現状の保険診療と対比するならば、主に薬機法で国内承認されていないものが先進医療とされて自由診療という扱いになっています。不妊治療で使われる薬剤や機器は、基本的に承認を得ているもので有効性と安全性を国が認めたものであり、先進医療とは違うんですよ。(たまに適応外処方はありますけどね)
で、もう成功率の話はたくさんしてるのでどうぞ以下でもお目通しください。
保険適用になると画一的な治療しか受けられない
これは内野からのリプでちょいちょいあるんですけど、自由診療だからこそ日本の不妊治療はレベルが高いとか、そういうやつですね。
個人的にはそもそも「標準治療」をガイドラインで定めるべきだと思うんですよ、症例に応じてしっかりエビデンスが確立されている治療法から始めるというのは、他の疾病領域ではスタンダードです。
保険診療されている多くの疾病領域でも、日本は世界のトップランナーですよ、自由診療だから医療レベルが高いわけじゃないですよ。日本の医療レベルをなめないで頂きたい。標準治療が悪いんじゃなくて、標準治療を最高の治療にしていくのが医療提供側の職務じゃないかと思います。
その上で先進的な治療法などは混合診療扱いにするなど、がん治療等で取られている方法を踏襲しても良いのではないでしょうか?
不妊治療に公的資金を入れるのは無駄遣い
一応日本語の定義から確認しましょうか。「無駄遣い」というのは、お金などを役に立たない事に使うことですよね?
不妊治療は生殖医療の介入が必要な人が妊娠・出産するのに役立っていますよね?実際、新生児の16人に1人が高度生殖医療がなければ生まれていません。
どういう論理で無駄遣いと仰っるんでしょうか?何について、なぜ無駄なのかまでご説明いただけます?
その上で、おそらくこの方が言いたいのは「経済合理性」とか「費用対効果」の観点ですよね?そんなの当たり前ですよ、イスラエルみたいに何が何でもユダヤ人を増やすという使命でもない限り、湯水のように費用を投入している国はありません。
だからこそ、日本での保険適用の際にも年齢制限や回数制限を設けることを提案しています。これは、いくつかの論文を元にすると公的資金投入のいわゆる損益分岐点となる治療年齢(女性)は38歳~41歳である、という結果が見えていることが挙げられます。
逆に言うと、そこさえ明確に線引すれば、「投資」という視点で見れば国家が不妊治療に費やす費用よりも、それによって生み出される(産まれる子が将来支払う)税収等のメリットの方が大きいということです。
これのどこが「無駄遣い」なんでしょうか?
無制限に不妊治療が受けられるのは許せない
「無駄遣い」という言い草と類似していますが、これもなんで無制限になること前提で話してるのか意味不明ですね。
無制限に反対なら「制限を設けるべきだと思う」って言うだけで十分です。もう少し建設的なコミニュケーションした方が得だと思いますが。
一応私が提案している保険適用の条件でも、他国同様に回数制限をつけることを想定しています。それはある程度の回数で成功率が頭打ちになるという事実があるから。別に適当に言ってる訳じゃありません。
それに治療を受ける側だって費用負担がないならいくらでも受けるかっていうと、時間も身体も苦痛なんです。だから設定した回数で治療が上手くいくような医療体制を整えることの方がずっと大事。
保険診療ってどんな治療も無制限と誤解されてる方もいるようですが、今も保険診療の算定回数に制限を設けているものはすでにありますし、年齢は日本の皆保険制度の中では保険証記載の生年月日を基準に運用することは可能です。今も年齢によって自己負担割合を変える運用してますからね。
勝手に決めつけて勝手に怒ってるだけなんですよ、落ち着いてください。
生活保護の人は無償で不妊治療できるのはおかしい
これも何度か言われたことあるとんだ勘違いですねぇ。
個人的には生活保護受給者だからという理由で差別する必要があるかは甚だ疑問ですが、一応運用上区別することは可能です。
生活保護を受けている方の医療費は健康保険とは別の「医療扶助」という医療費給付を受けるので制度の対象外とすることは運用上可能で、窓口でも「保険証」ではなく「医療券」と呼ばれるものを提示します。
つまり、区別することは可能であって、そのことが健康保険料を納めている方の保険適用まで反対する理由には該当しませんよ。
生活保護に対してなんか変な恨みでもあるなら、ここを巻き込まないでどうぞ行政の窓口へご訪問ください。
反対するならもう少しまともに議論できる材料求ム!
なんかもうパターン化されちゃって食べごたえもないんですよねぇ。せめてもう少し議論になる素地を整えてからにしてください、いつでもお待ち申し上げております。
普段は面倒なんでこちらにプラスになりそうなモノ以外は無視してしまうのですが、コメントなどで見るたびに私が思っていたことをざっと書きました。どうもわざわざこんな書き方して失礼致しました。