めありずむ

不妊治療・育児・Mr.Children・手帳・雑記ブログ

KLCが電子カルテを導入する意義と期待

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ちょっと堅苦しい話でごめんなさい!KLC(加藤レディスクリニック)が2018年11月より電子カルテの導入と、その準備対応として10月~11月の診療時間短縮を発表しています。

この期間に採卵周期を迎える方などは、さらに待ち時間が増えるのかといった心配をされているかと思いますが、今日は病院・患者・ヘルスケア業界それぞれの視点でその意義を考えてみたいと思います。

KLCの電子カルテ導入に関する対応

  • 10月と11月は、平日の最終予約は13:30まで、土日祝は11:30までになる
  • 大幅な待ち時間の増加が予想されるとアナウンス
  • 8月・9月の連続採卵の相談を受け付ける

移行期にあたる10月以降の年内は、おそらく相当な混雑は覚悟しないといけないかもしれないです。それでも、私はこの電子カルテ化には意味があると考えています。

そもそも電子カルテとは?

カルテは医師が患者を診療した際、その症状や経過を紙に記入し、記録して保存するもので、従来は紙に記入するのが一般的でしたが、それをPC上で電子的に編集・管理してデータベース化したものが電子カルテです。

普段事務系のお仕事では、PCで文書編集をするのが当たり前だと思いますが、多くの医療現場ではそれが未だに紙ベースなんですね。

これが、医療業界はIT化が10年以上遅れていると言われている所以です。

書いてある項目としては、不妊治療クリニックの場合以下のようなものがメインになります。

  • 患者さんの氏名・生年月日(年齢)
  • 周期、日付毎のホルモン値などの検査結果
  • 卵胞サイズ
  • 処方薬
  • 処置内容および結果
  • 子宮内膜のエコー画像(貼り付けてある場合も)

日本における電子カルテの普及率

厚労省は医療費コスト削減の名目で電子カルテの普及率60%を目指していますが、2017年末時点でも、普及率は100床以上の病院で22%、99床以下の診療所ではだったの8%。

不妊治療クリニックでもまだほとんど導入されていないと言っても良いと思います。不妊治療特化の電子カルテとかもサービス自体は出てるんですけどね。

要は全然普及していないんです。

理由は「コスト(初期費用)」と「移行にかかる業務負担」だと思われます。

不妊治療クリニックのような入院患者を持たない施設では、数百万円で導入可能と言われているものの、電子化したときに診療報酬上のメリットがあるわけでもないので、なかなか現状を変えたがらないという日本の習慣が残ってしまっているように思います。

また、過去のカルテ情報を電子化するという作業負荷、PCの入力が苦手という医師も未だに意外と多く、その点も導入を阻む要素になっていそうです。

しかし、電子カルテのメリットは大きいと考えますので、「不妊治療クリニックがカルテを電子化する」という前提で考えてみたいと思います。 

患者にとっての電子カルテのメリット

  1. 物理的なカルテの移動による無駄な時間を省ける(特に複数フロアの大きなクリニックなど)
  2. 蓄積されたカルテのデータを、類似症例等に分類して分析、データベース的に利用することで治療効果向上が期待できる(そこまでやれるかは病院次第)
  3. 診断書、紹介状などの発行が早まる

くらいですかね。1日に600~700人を診察するKLCくらいの規模であれば、全体的な時間短縮は効いてくると思います。

患者視点で見れば、特に不妊治療の分野においては、電子カルテの本当の価値としては、2が一番だと思っています。

いつまでも医師が「こんな人もいる」という "n=1" みたいな症例の話をしている時代ではないですよね。

病院にとっての電子カルテのメリット

  1. 過去のカルテ内容の認識率向上(誰が記入しても見やすい)
  2. カルテの保管などに必要だった物理的スペースの節約
  3. カルテの出し入れや準備などのカルテ管理関連業務の削減
  4. 診断書や紹介状のフォーマット化、自動作成等の機能
  5. バックアップの取得によるカルテの物理的な喪失リスクの回避
  6. 症例研究などへのデータ利用の効率化

病院にとっては業務効率化、コスト削減的なメリットは結構あると思います。実際アメリカで電子カルテ化が進んだ理由も医療事務コストの削減効果の高さでした。

日本はそもそも先進国の中で相対的に医療費が安いので、特に小さいクリニックではコスト削減効果も出にくいかもしれませんが、最初さえ乗り切ればメリットがあるという感じでしょうか。

小規模のクリニック向けに電子カルテシステム(ソフト)を無償導入するサービスなんかも存在しています。

電子カルテのリスクやデメリット

  1. 導入コスト(病院が負担するしかない)
  2. パーソナルデータの漏洩リスク(ウイルスや不正アクセスなど)
  3. ネットワーク遮断やシステムダウンのリスク
  4. 安定稼動実現までの診療時間の遅延

このあたりは電子化する場合のマイナスポイントと一般的に言われる部分になります。ただね、これって今の電子化した世の中、どこの企業でも抱えてるリスクなんですよ。

不妊治療クリニックだって災害時に自家発電で凍結した卵を守れるように対策しているわけですから、それと同じように対策すれば良いと思います。

金融システムだって、電子商取引だって、新幹線や航空機の予約発券システムだって、それこそ止まったら大混乱なものが、ちゃんと運用されているわけですから、医療だけ特別違うということはない、つまり導入しない理由にはならないと思っています。

ヘルスケア業界に与えるインパクト

政府が中心になって医療のICT化を進めていますが、この医療データの利用というのは大きな可能性を秘めた領域であることは間違いありません。

っていうことも、電子カルテで治療実績などがデータベース化できると実現性は高まると思います。もちろん活用する前提で項目や記入ルールの統一化をしなければいけませんけどね。

紙ベースのカルテ管理では、大量の診療情報を一気に処理して分析するなんて到底無理です。電子カルテになることで、初めてその道が拓かれるわけです。

KLCの存在感が大きいのは事実ですが

不妊治療こそ情報の蓄積や活用が患者の利益になる領域であり、KLCが電子カルテを導入することは、個人的にはとても意義のあることだと思います。

そして、絶対に宝の持ち腐れにしてくれるな、という期待を持っています。

今回はKLCが電子カルテ化するということで、これが他の不妊治療クリニックにも波及していけばいいという思いで取り上げております。

この規模のクリニックが動くというのは、それだけ業界に与えるインパクトはあると想像するからです。

しかしながら、他の記事やTwitterでも時折触れておりますが、これから体外受精にステップアップしようという方で、卵巣機能に特に問題がない方は、有名だからという理由だけで最初からKLC系列に行くのは個人的にはおすすめしません。

高刺激で一度にたくさんの卵子を得られる方が圧倒的に治療成績は良いですし、その方法が世界標準です。イギリスなど自然周期での体外受精を禁止している国もあるほどです。自然周期や低刺激が向いているのは高刺激で誘発しても質のいい卵子が得られない方のみと考えて良いと思っています。

私自身も高刺激(アンタゴニスト法)で2回採卵、4回移植したもののかすりもせず、良好胚盤胞すら全く得られなかったという事実をもってKLCに転院しました。

KLCは巷でも言われているようにあくまで「最後の砦」であって、「体外受精の玄関」ではないというのが個人的な見解です。

実際、私の知る限りですが、KLCに通院されている方のほとんどは、過去に他のクリニックでは結果が出なかったりして転院されている方々です。(それだけ他では結果が出ない人が多いというのも事実になりますが・・)

余計なお世話かもしれませんが、特にステップアップを検討されている段階の方、体外受精を始めたばかりの方が、なるべく遠回りせず最短ルートで出産までたどり着けるようにとの希望を込めて!