めありずむ

不妊治療・育児・Mr.Children・手帳・雑記ブログ

保険適用になると「標準治療しか受けられない」という言葉の誤解

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不妊治療費の保険適用について、過去に頂いたコメントの中で気になっていたのが、「標準治療しか受けられなくて選択肢が減るなら保険適用しないでほしい」という声なのですが、なんかいろいろ誤解な気がするのでその辺を書きたいと思います。

大事なことだけ先に言う

がんの話題などで誤解されがちですが、以下の認識が正しいと思います。

  • 標準治療や治療ガイドラインは画一的な治療法を定めているものではない
  • 治療ガイドラインから外れた治療は保険適用にならないのではない
  • 治療ガイドラインがないと保険適用にならないわけでもない

保険適用はその範囲を定めることが可能で、標準治療や治療ガイドラインとは別議論です。

というか、保険適用にできるのは一定の有効性が認められるときであって、その時点でほぼ「標準治療」というハードルを超えていることになります。

そして、体外受精などの高度生殖医療もPGTと合わせることで有効性は十分保険適用に値するものになります。

どこからそんな「保険適用だと標準治療=平凡な治療しか受けられない」みたいなぶっ飛んだ発想になるのかはちょっと不明ですけども、まぁ何かしら文句をつけたいってことなんでしょうかね・・。

そもそも「標準治療」 は画一的な治療を指すものではない

おそらくメディア等でがんについて報道される機会が多いので、

  • 標準治療(外科手術、放射線や化学療法)
  • 先進治療(最先端とされる免疫療法、ANK細胞療法、粒子線治療等)

という対比で、しかも「標準治療は最低限度で画一的」みたいなイメージを持たれている方がいらっしゃるようなのですが、それはだいぶ誤解があります。

がん治療は特殊な側面もあるので今回は触れませんが・・。

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。
なお、医療において、「最先端の治療」が最も優れているとは限りません。最先端の治療は、開発中の試験的な治療として、その効果や副作用などを調べる臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな「標準治療」となります。

ーー国立がん研究センターがん情報サービス用語集より引用 

標準治療というのは医療的には治療ガイドライン 〔診療指針,標準治療〕として定義されている内容を指すことが多く、国立がん研究センターでも治療ガイドラインは「強制ではない」とういことを明確にしています。

メジャーな疾病については、それぞれ専門医学会が疾病について「治療ガイドライン」というものを作成している (例:高血圧治療ガイドライン2014)のですが、ご覧の通り全く持って画一的な治療法を定めているものではありません。

がん治療についても、有効性が広く確認できない先進的な治療法についてはまだ保険適用の範囲として認められていないので自費診療になるよ、ということを言っていて、画一的な治療法しか保険適用にならないというのは誤解なんですよね。 

治療ガイドラインがないと保険適用できないわけじゃない

その治療ガイドラインですが、不妊治療にフォーカスしたものは現在まだ作成がなく、産婦人科診療ガイドライン(婦人科外来編)2017に一部記載があるのみです。

しかし、それが理由で保険適用できないということはありません。

そもそも、治療ガイドラインや標準治療と保険適用は、元来全くリンクしていない話です。

以下に厚労省の委託で治療ガイドラインの収集・掲載を取りまとめているMindsのWebを載せましたが、治療ガイドラインの掲載がある疾病は475です。

それに対して比較的人間が患いやすい疾病の数は1000は下らないでしょう(難病指定の疾患だけでも約330)し、国際疾病分類の細かい分類で言えば何千にもなると思います。

保険診療がされている病気で治療ガイドラインがないものなんてたくさんあるんです。

診療ガイドラインは、科学的根拠に基づき、系統的な手法により作成された推奨を含む文章です。患者と医療者を支援する目的で作成されており、臨床現場における意思決定の際に、判断材料の一つとして利用することがあります。
診療ガイドラインは、医療者の経験を否定するものではありません。またガイドラインに示されるのは一般的な診療方法であるため、必ずしも個々の患者の状況に当てはまるとは限りません。使用にあたっては、上記の点を十分に注意してください。(MindsのWeb sIteより抜粋)

最初に書いた通り、「標準治療」や「診療ガイドライン」がない疾病でも、その治療法から外れていても、保険適用範囲であれば保険診療はされています(というか数え切れないほどある疾病にガイドラインがないと保険適用できないなんていったら大変な事になりますよ・・・)

しかも、上記にあるように治療ガイドラインもあくまで「推奨」レベルであって、その通りにしなきゃ保険適用にしないよ!なんてことは厚労省は言っていません。

(そんなことをしたら日本の医療提供体制は崩壊しますわ・・・・)

とはいえ、不妊治療でも治療ガイドラインの作成は可能

保険適用とは別議論という中で、それでも不妊治療もこれだけ方法論と有効性が確立されてきているので、治療ガイドラインは作成されるべきだとは思います。特に地域格差や施設格差をなくすにはこの取り組みは必要ですよね。

で、実際治療を受けている方はご存知かと思いますが、不妊治療って完全に個別医療かというと実際はそうではないですよね。

みんな似たようなタイミングで同じような検査を受け、その結果如何によって次の治療ステップが決まっていく。

問題が見つからない場合には、タイミング法→人工授精→体外受精(顕微授精)というステップを経るし、体外受精も卵巣刺激(排卵誘発)→採卵→(凍結)→移植というステップがすでに確立されています。

採卵の目安になるホルモン値や卵胞サイズ、卵巣刺激の方法も薬剤の組み合わせや日程は標準的なプラン、移植時のホルモン補充、内膜の厚みの目安・・・違うクリニックで全然異なった事を言われるかというと、正直そういうケースは少ないと思います。

(そもそも年齢や卵巣機能に関係なく低刺激を推奨するとかはすでにエビデンスがあるのでむしろガイドラインで是正した方が良いかと・・)

なぜかというと、それが多くの方にとっては効果があることが見込まれるからであって、ガイドラインが実質的に出来ているのと同じような状態だと思います。

もちろん医師によって有効性の意見が異なったりするものは保険適用の対象にすべきかどうか議論の余地があるわけですが、少なくとも「人工授精」や「体外受精」や「PGT-A」がそんなにブレる治療法かというと、それはもうないと言っていいと思いますね・・。 

あとは高額なオプション系の検査などの有効性がどこまで保険適用の範囲として妥当かという議論だけだと思います。

なぜ不妊治療だけ保険適用の懸念が出るの?

不妊治療も「原因」を探ってそれに対処する方法で治癒(妊娠)を目指すのであって、他の疾病の治療と原理原則が違うわけじゃないんですよ。

なんで不妊治療だけ特別違うみたいに思われるのかが、すごく疑問です・・。

人間の身体は同じじゃありませんから、どんな病気だってその人によって治療法も薬剤も合う合わないがあります。

大規模な臨床試験で有効性が認められ、推奨されている方法の中から治癒や回復に向けてその人に適した方法を試してくいくのが保険適用されている大方の疾病に対する医療です。

ということで、何かすごい誤解をされている方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の医療ってそんなイケてないわけじゃないんですよ・・・。

 

ただ、繰り返しですが、一部「広く有効性が認められていないもの」についてはいわゆるがん治療の先進医療のように「オプション」とされ、保険適用の範囲からは外れる可能性はあります。

その時に懸念されるのが「混合診療」(保険診療と自費診療は一連の治療としては同時に受けられないため、自費診療があると保険診療分についても保険適用できない)なのですが、こちらも不妊治療に関してはあんまり問題にならないのでは・・というのを別途書こうと思います。 

毎度のお願いですが、保険適用しない方が良いと考える方はその理由や背景をぜひぜひ教えてください~!