めありずむ

不妊治療の保険適用と理解促進に取り組むブログ(時々妊婦の雑記)

高度不妊治療が保険適用されている世界の国

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世界各国の不妊治療、特に体外受精や顕微授精に対する保険適用の状況を調べています。英語で情報が出てこない地域にはかなり苦労していますが・・・。

欧州で保険適用されている国をチェックしてみた

手始めに情報が取りやすかったヨーロッパを見てみましょう。

青く色付けされた国は公的な保険診療が受けられる国になります。【参考文献1】

(※国によっては保険制度が異なるのでpublic insuranceに類するmedical careの場合は保険診療と読み替えています)

何が言いたいかというと、ヨーロッパではすでに「不妊治療(体外受精を含めて)はある程度保険でカバーするもの」というコンセンサスが出来ていて、とっくに実績がある、ということです。

早い国では1990年代から保険診療になっています。日本がいかに後進の状態にあるかって話ですよ。 

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日本はARTの件数が多いはミスリード?

そもそもなんですが。

「日本は世界一体外受精の件数が多い」という文言を見ることは多いと思います。それ自体は事実です。

しかし、単純に件数が多いから、多くの人が治療を受けているということにはなりません。

下記は、ARTの件数を「人口100万人に対して何件行われいるか」という見方をした国別のランキングになっています。【参考文献2】

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実施された生殖補助医療のサイクル数を人口 100万人に対する比率で比較した世界ランキング(2009)

日本はなんと、26位!え、1位じゃないの?

10年前のデータなのでここから日本でも世界でもART件数は増加しましたが、2009年から2016年の間に日本でART件数が倍増していることを考慮しても15~20位くらいでしょう。

そうなのです、実は、そんなに多くないんです。日本のART総数が多い理由は主に2つ。

  • 人口が多い(ご存知の通り、世界10位ですね)
  • 患者1人あたりの実施サイクル数が多い(つまり、治療成績が悪い)

件数が世界一だから、必要な人は治療を受けられていると誤解されるかもしれませんが、決してそうではありません。

セックスレス大国であり、養子里子制度の浸透度も低い、不妊で悩む人の数が世界有数であることは間違いないにも関わらず、です。

私はこの結果から、日本ではまだ必要な人がART治療を受けられていないのではないか、という仮説を持ちました。

高度不妊治療を保険適用している国はたくさんある

「高度不妊治療(体外受精・顕微授精)に保険適用をするような国なんてそんなにあるはずがない」

というご意見を頂いたことがありましたが、すでにいっぱいある、ということに加えて、あることに気づきました。

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高度不妊治療を保険適用にしている国は、人口に対するARTの実施件数が多いのでは? 

偶然にしては、随分偏ってません?

冷静に考えれば当たり前ですが、費用負担が小さければ、必要な治療にアクセスしやすいのです。

をしたのが最初に調べた欧州+αで、保険診療されていることが確認できている国です。

ダントツ1位のイスラエルは45歳まで回数制限なしで全額補助(無償)なので飛び抜けていますが、要は、経済負担を気にしなければ受けたい人は治療を受けている、ということを如実に表しているのではないでしょうか?

さらに、中東のレバノンやヨルダンについても公式な情報は見つけられていないものの、公的な医療費補助が充実していることが、以下の文献から読み取れます。

中東諸国では、文化的に結婚と出産が重視されており、不妊治療は夫婦の関係性を持続させる重要な要素となっている。そのため、公的な医療費補助制度が整備されるなど、生殖補助医療へのアクセシビリティへの便宜がはかられている。

【参考文献3】JETRO不妊治療の時代の中東:家族・医療・イスラームの視点から (特集 開発途上地域・新興国の今 -- アジア経済研究所2017年公開講座) より一部引用

やっぱり、日本の不妊治療環境下では、満足に治療を受けられていない人がめちゃくちゃいるってことなんじゃないんですか????

各国の年齢制限と回数制限

次に、実際に保険適用している国々が、どのような制度で運用しているのかも参考までに。

どういう形が見やすいか迷ったのですが・・実は年齢に上限設定がない国はほとんどありません

各国とも30代後半~45歳くらいまで、つまり生殖補助医療によって現実的に出産が可能な年齢を上限としています。

この年齢を越えて治療を行う場合には、自費診療ということになるわけですが、年齢制限を設けることによるメリットは大きく3つあると考えています。

  • 保険診療が可能な(比較的可能性が高い)うちに不妊治療を試みる人を増やす
  • 公的資金を投入する上での費用対効果が出やすく、財政面でも取り組みやすい
  • 疲弊する治療から、別の生き方や選択肢を検討する線引きのタイミングになる

*オーストラリアは情報が探せませんでした

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一方で、回数制限は国によってバラつきがありますが、概ね3サイクル~6サイクルをカバーする国が多いようです。

ARTが保険適用されている国とその条件

一応、これまでに調べられている一覧のリストも乗っけてみます。

まだ全世界を調べ切っているわけではないので、すべてではありませんが、ここに乗せただけでも26カ国ありますね。

国名 年齢制限(女性) 回数制限 カバー金額
イギリス 39歳 3サイクル 100%(公立のみ) 
42歳 1サイクル 〃 
イスラエル 45歳 なし 100%
エストニア 40歳    
オーストラリア   なし ~60%
オーストリア 40歳   ~70%
オランダ 42歳 3サイクル ~90%
韓国 44歳 4サイクル  
ギリシャ 40歳 3サイクル  
クロアチア 42歳 6サイクル  
スウェーデン 45歳 3サイクル  
スペイン 39歳  

100%(公立のみ、薬剤費は一部自己負担) 

スロバキア 39歳    
スロベニア 出産可能年齢    
チェコ 39歳 4サイクル  
デンマーク 40歳 3サイクル  
ドイツ 40歳 3サイクル 50%
ニュージーランド 39歳    
ハンガリー 44歳 移植5回 70~75%
フィンランド 40歳    
フランス 42歳 4サイクル 100%
ベルギー 43歳 6サイクル  
ポルトガル 42歳(~AIH) 3サイクル  
40歳(ART) 1サイクル(年間)  
ニュージャージー州(米)   4サイクル  
メリーランド州(米)   3サイクル  
ラトビア 37歳    
リトアニア 45歳    
ルーマニア 40歳   ~70%

不妊治療の環境は女性ヘルスケアの環境を表す?

不妊治療を取り巻く環境というのは、その国の女性ヘルスケア全体の環境を体現しているように感じます。

不妊治療の選択肢(PGT-Aだったり、卵子提供だったり)、流産時の手術方法、無痛分娩、ピル(緊急避妊用含む)の浸透度、避妊方法の選択肢・・・。

日本は、女性に選択肢を与えることを極端に避けているように感じて仕方がありません。

選択肢を与えることは、その選択を選ばない人の権利を脅かすものではないのに、勘違いも甚だしい議論ばかりがされています。

世界と比べてしまうと、やっぱりこの環境っておかしいよね、と思わずにはいられないわけです。

この事実に、当事者も当事者だった人も、当事者になるかもしれない人も、当事者じゃない人も、当事者を目の敵にする人も、早く気づいてくれ。

そんな思いで、海外の文献や情報を漁る日々です。

関連記事のご紹介

参考文献

  1. http://www.epgencms.europarl.europa.eu/cmsdata/upload/b50d9310-07f1-4691-9f2f-137cbc0cf75d/No_12_September_2016_in_vitro_fertilisation.pdf
  2. Adamson G.D.,“Global Cultural and Socioeconomic Factors That Influence Access to Assisted
    Reproductive Technologies,” Women’s Health2009, 5(4), pp.351–358
     
  3. 不妊治療の時代の中東:家族・医療・イスラームの視点から (特集 開発途上地域・新興国の今 -- アジア経済研究所2017年公開講座) 
  4. http://www.ncsl.org/research/health/insurance-coverage-for-infertility-laws.aspx