以前から海外の医療系のニュースを読む度に患者側のパワーがすごいな、日本の医療では「患者の声」ってそんな重視されてるかなぁ?と疑問に思うことがあった。
日本では患者団体(患者会)の存在感が薄い?
冒頭で書いたとおり、特にアメリカでは患者の立場が日本とはかなり違うように感じることがあります。
やはり「権利」に対する感度が非常に高い社会だけあって、いわゆる「アドヴォカシー=当事者の正当な権利を獲得するための活動」が積極的に行なわれており、医療のあり方や政策にまで影響を与えているのだと思います。
米国では患者団体の影響力が大きい。がん政策に関しても大きな発言力を持っているから、学会としても、患者団体を大いに尊重する。(中略)患者団体が連邦政府議会に「声」を届けることで、政策が動いたり、政府予算が増えたりするという実態もある。
「・・費用対効果評価制度に患者会がより積極的に関われるようにすべきとも主張。日本の患者会は、海外に比べて目立たない存在になっている。もっと声を上げなければならない」欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)オーレ・ムルスコウ・ベック会長「日刊薬業」(2019年2月19日付)
「欧米では患者団体の立ち位置も日本とは異なる。患者団体とコラボして患者に情報を届けることは重要だ・・(中略)・・患者さんの状況をよく理解している方々が作る情報の分かりやすさに大変驚いた。患者団体とのコラボについてはRAD-ARとしても考えていかなければならない」
くすりの適正使用協議会(RAD-AR)俵木登美子氏「Monthlyミクス2019年6月号」(2019年2月19日付)
こういった声は、特に日米両方の医療事情を知る方から多く聞かれる印象なんですよね。
日本でも政策決定において医師会とか経団連とか農業組合とか、まぁそんな方々のご意見は非常に大事にされると思うのですが、医療においてはそのステークホルダーのひとつに患者団体も入っているというイメージでしょうか。
これと比較すると、日本の医療においては全体的に「患者の立場・地位」があまり強くない上に、不妊治療に関しては患者数のわりに患者団体としての活動がまだあまり大きくないのでは、という気がするわけですな。
それに加えて、海外の患者団体は比較的公益活動(広く社会一般のためになる活動)や共助を主軸にしているのに対して、日本は患者同士の自助が中心であるということも、規模感に繋がる大きな違いでしょうか。
このような海外との比較は、もちろんバックグラウンドの違いはあるので一概に良い悪いは言えないのですが、こんな世界もあるということを知るにはいい対象だなと思います。
患者団体(患者会)は何をする組織なのか?
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会の紹介によると、患者団体の役割は3つあるとのこと。
- 病気を科学的にとらえること。
- 病気と闘う気概をもつこと。
- 病気を克服する条件をつくりだすこと。
これを不妊治療に当てはめてみると、
- 不妊治療についてエビデンスベースドの正しい知識を広めること
- 精神的なサポートをすること
- 医療技術(PGT-Aなど)、経済負担(保険適用など)、時間的制約(仕事との両立など)、治療以外の選択肢(養子縁組など第二の選択肢の実態的な拡充など)の全面的な患者支援を実現すること
という感じなのではないかと思います。
つまり、現代医療の課題であり、患者として私達が常に求めているようなことに表立って取り組む組織なのかな。
各国の不妊患者団体
で、実際世界を見渡してみると、各国とも不妊治療領域でもかなりしっかりした患者団体があるようです。(英語圏の国ばっかりでゴメンやで・・)
チャリティという概念も広く浸透している国では、比較的運営しやすいのかなぁ?
- アメリカの不妊患者団体:RESOLVE
- 欧州の各国の患者団体包括組織:Fertility Europe website
- イギリスの慈善団体: Fertility Network UK
- オーストラリアの患者団体:Access
日本には2つの団体がある
NPO法人Fine
セルフサポートグループとして最大なのはFineさんですね。代表の松本さんを筆頭に、メディアへの露出など積極的に活動されています。
保険適用に関する政策提言等も実施されていますし、政府が識者に意見を求める場には患者代表としてFineの方が出席されているケースもあります。
外向きの活動もたくさんされていますが、全体的には「患者さんを精神的にサポートする」点に重きを置いた活動をされているイメージが強いですかね~。
着床前診断を推進する患者の会
PGT-Aの認可と普及を大目標に活動されている団体で、比較的新しいものの、こちらも安定的に活動が続いています。
こちらは患者さん同士の交流などもしつつ、会の目的通り「外部に向けた提言・訴求活動」が主軸になっている組織かなという印象です。
ただ、どちらも規模や活動量はRESOLVEなどと比較するとまだすごく小さいのかなと。もちろん、日本の他の疾患の患者団体と比較しても患者数とは比例していない小ささなのが実情かと思います。
その理由はいろいろあって、今日は長くなるので割愛するけど、どういう組織が何を担っていくのか、という目的の設定は結構重要なんだろうなぁ。
でもね、現状のまま手をこまねいているかというと、そういうわけでもないのです!
4月13日@名古屋の「日本産婦人科学会の学会講演」にて!
来る2019年4月13日(土)に名古屋で日産婦の学会が行われるようなのですが、そちらの会場で着床前診断を推進する患者の会が参加医師や関係者に向けてビラ配りを実施されるとのこと!
【参加者募集】4/13(土)に名古屋で行なわれる学会の集会に合わせ着床前診断の国内認可を求めるビラを配布するためご協力頂ける方を募っております。自分も終日参加予定です
— 山猫スズメ📄4/13名古屋でPGT-Aビラ配りするよ (@szmymnk) 2019年3月27日
臨床試験対象外の方が1日でも早く受けられるよう、何卒よろしくお願いします。詳細は↓で#拡散希望 https://t.co/wm6EpViskW pic.twitter.com/WlUChFd7nJ
私自身は残念ながら同じ日に別の医療系シンポジウムに仕事で参加せねばならず、名古屋にお伺いすることはできないのですが、少しでも力になれないかと思いこちらで書くことにしました。
日本の不妊治療の理不尽さを変えていくには、そもそも医療における「患者の地位向上」と共に、このような「目に見える形」の患者主体の活動が必須かもしれない、こういうことが増えれば変えられるチャンスがあるのではないか、そう思っています。