めありずむ

不妊治療の保険適用と理解促進に取り組むブログ(時々妊婦の雑記)

【不妊治療の保険適用】現実課題①「混合診療」編

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昨日「第4次少子化社会対策大綱」が閣議決定されました。実際「不妊治療についての公的保険適用拡大に向け調査研究実施が盛り込まれた」という点は前進を見せてはいるものの当事者の要望からするとほんの一部なので、引き続き動きを注視していきたいなと思っています。

大綱での「不妊治療の保険適用」への言及

全体的な納得感は皆無ですが、保険適用に関連する部分だけを抜粋すると、「案」から多少の前向きにニュアンス変更はあった、これはパブリックコメントの効果もあったと考えて良さそうです。

以下、第4次少子化社会対策大綱(別添1)施策の具体的内容P23より画像引用

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つまり(案)に追加修正されたのは以下の部分。

効果的な治療に対する医療保険の適用の在り方を含め、不妊治療の経済的負担の軽減を図る方策等についての検討のための研究調査を行う

前向きですよね。

大綱案なんて政府はほとんど変更しないと思うんで、これだけでも本当に大きな一歩だとは思う。

しかし、内容自体はツッコミどころは満載です。

そもそも最初に来るのが相談センターなの謎だし、その実績や効果はいくら聞いても出てこないしさ。ページ数に対する不妊・不育項目の少なさは全然変わってないし。

パブコメでも出しましたが、高額の医療費がかかるのは体外受精・顕微授精だけじゃないですし(男性不妊の手術も各種検査も胚の凍結更新費用も高額ですし、なんなら人工授精だって数万円単位ですからね)、適応症と効果が明らかな治療でいう「適応症=不妊症じゃないの?」というのも不明瞭だし、支援を拡充するの方向性は所得制限撤廃なのか回数制限変更なのか範囲の拡大なのかも示されてないしね、相談センターのところでは「不妊・不育」と言っときながら、肝心の研究開発や仕事の部分では不育入れてないしさ。

「保険適用の在り方を含めて検討する」というところ以外、パブコメが拾われた形跡はほとんどないんです。

GWにこっそり募集したのにあまりにコメントが集まって不妊治療の保険適用に関する意見が非常に多くて驚いちゃって、こりゃ無視できないとそこだけ盛り込んだ、というように見えます、私には。

だからこれは、大きな一歩ではあるけど、手放しで喜べるものではないというのが初見での率直な感想です。

不妊治療の保険適用時に押さえておきたい2つのポイント

実際に検討いただけるとして、保険適用に向けて「絶対に」クリアすべき課題として押さえておかないといけないのが、以下の2つだと思っています。

  • 通常の治療で混合診療にならないための保険適用範囲設定
  • 診療報酬の点数設定

例えば、単純に不妊治療の手技部分(人工授精や採卵、移植)等だけが保険診療になっても、その治療と一連で使用される薬剤(漢方薬を含む)やアシステッドハッチングのような追加のオプションが自由診療のままならば、「混合診療」となり、結局全部が自費診療になってしまうという罠。

自然周期新鮮胚移植の体外受精なら保険適用みたいなおかしな話になりかねませんからね(笑)

例としては、性別適合手術のみが保険適用になったことでホルモン療法との混合診療問題が発生した「性同一性障害」の二の轍を踏んではならぬ、ということ。

それと診療報酬の点数設定も非常に重要です。

高すぎては3割負担でも自費分が高額になるし(例えば採卵が20万なら自己負担は6.6万円だけど、30万円なら10万円なのでだいぶ違いが出ますよね、高額療養費制度にもよりますけど)、一方で安すぎるとクリニック経営を圧迫し医療の質そのものが低下してしまうというリスクをはらんでいるので、すごく慎重に決める必要があるわけで。

もちろん他の医療でも同じ課題を超えて運用されてはいるので、最適解というのは存在するとは思っていますが。

この2点がしっかり現状の診療実態に則しているかという点は絶対にチェックしないといけない。形骸化した保険適用になってしまってぬか喜びにならないように、しっかり不妊治療の専門医や当事者視点も含めた検討が行われるように働きかけを続けないとというのが今思っていることです。

混合診療NGとは? 

この記事ではまず混合診療という観点をカバーできればと思います。

厚生労働省の見解だとかなり大雑把な書き方しかされていないので分かりにくいですが、要は一連の診療(ある疾病における一連の診療行為)において保険診療と自費診療の併用はできないという話ですね。がん治療とかでよく問題になってるアレです。

過去にはこの混合診療を認めないことは違法か適法かを最高裁で争った裁判もありました。(結局賛否がありもやっとしつつも適法という結果で終わっています。) 

ちなみに、保険外併用療養制度(患者申出療養含む)などを含めて(中医協でもこんな審議がされているし)、混合診療の位置付けや実態についても紆余曲折している感じはありますが、

一応現状の原則としては混合診療はNGで、自由診療を受けた場合は保険診療分も自費になる、というのがルールです。

でポイントになる「一連の診療」というのがかなり曖昧で、「同日じゃなければOK」としちゃっている医療施設も結構ありますが、おそらく本来の解釈では「人工授精」「体外受精」といった不妊治療なら同一周期の診療みたいなものか、もしくは「生殖補助医療」すべてが一連の中に含まれるという話であると考えておいたほうが良いのかなと思います。

まぁあの、現状でも実態の運用はかなりグレーですけどね。産婦人科に通院されている方なら何を言っているかはお分かりになるかと思いますのであんまり書きませんが・・とはいえ、混合診療NGは厳密に守られるという前提でいきましょう。

「薬事承認を得ているか」はポイントになる

不妊治療を保険適用にする場合、おそらくそのメインは「人工授精」「体外受精」「顕微授精」における「採卵」「培養」「移植」「凍結」といった手技そのものになると考えるのが妥当かと思います。

(その逆、例えば薬剤だけ保険適用とかは論外すぎてマジであり得ないのでもう触れません)

例えば手術のみが保険適用になったことで混合診療問題が発生した「性同一性障害に対するホルモン療法」は、その適応としての薬事承認を得ていないことが根本の理由でした。

がん治療などの先進医療も同じです、日本で承認されていない治療法だから保険適用外になっているのです。

では不妊治療はどうかというと、実は「多くの医薬品や医療機器は不妊治療を適応とした薬事承認を既に得ている」というのが実態です。

薬事承認は取得しているが保険適用されていない(中医協による公的薬価は付けられていない)というのが、いわゆる保険適用外の先進医療等とは違うところです。

これがすごく大事で「薬事承認がないから保険適用外です」という理屈は、不妊治療ではほとんど通用しないと考えています。

PMDAでは医薬品・医療機器の承認情報が検索できる機能もあるのでご自身が治療で使われた薬剤などを調べてみるとわかりますが、

例えば医療用医薬品だと、卵巣刺激でよく使われるゴナールエフペンの添付文書(承認情報)はこんな感じ。もろ「生殖補助医療における調節卵巣刺激」としての適応で薬事承認を取得しています。

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クロミフェンやHMGも書き方は異なるけど、「不妊症の排卵誘発」と読み取れますし、アンタゴニスト法で使われるガニレストやセトロタイドは「調節卵巣刺激下における早発排卵の防止」という生殖補助医療の一環であることがわかる内容になっています。

一方で、医療機器についても(機器は人体にどう影響するかによって承認のランクも違うのでちょっとややこしいんですけど)人工授精用(精液注入用)子宮カテーテル、採卵用吸引器(針)、胚移植用カテーテル、ヒト組織用培養装置などいわゆる治療に必要な機器は概ね承認取得がされていると解釈して良いと思います。

ただ例外もあって、例えばGnRHアンタゴニスト製剤のレルミナ錠は排卵抑制として現場でも使われ始めているものの、不妊治療に関する適応はありません。そういうケースも一部存在はするので、そういった薬剤・機器を使用する場合に混合診療になってしまうのでは?という課題はたしかにあり得るのです。それは以下で書きますね。

適応外処方になっている薬剤の救い方

適応外処方がされている場合、製薬会社が臨床試験をして不妊治療に係る適応追加の承認を取得してくれれば薬事承認は降りることになります。

製薬会社もそれをやることがペイするのであればもちろん承認取得に動くでしょうが、やはり手間がかかるので断念する可能性もなくはない。

でも実は仮に製薬会社が治験を断念したとしても、不妊治療に関して言えば年間合計50万件という実績を考慮すると適応外使用に関してもいわゆる55年通知による適応外処方や二課長通知の公知申請で救えるだろうと考えています。(なんかわけわからん話でごめんよ・・)

これは平たく言うと、現状は適応外処方になっている薬剤でも十分な実績があったり国際的に適応がなされていたりするものはいわゆる通常の臨床試験等を経た「適応追加申請」をしなくても承認すべし、という通知で、適応外処方問題の切り札と言われたものですね。

この点から、私は生殖補助医療の治療に関わる薬剤・機器は概ね保険診療でカバーされる対象として拾われると見ています。

承認が下りない新しい検査や治療法の救い方

そうなると、残りは例えばERA、EMMA、ALICE検査(BCEの場合も含めて)、着床障害(子宮収縮など)・不育検査あたりが大きなオプション項目になるかと思います。

あとはGIFT/ZIFT法(卵管内移植法)のようなごく一部の施設で行なわれているような治療法とかが、現状の薬事承認の範囲から外れてしまう可能性はあります(ごめんなさい、全部は調べきれなくて)。

保険適用(=薬事承認)には当然有効性・安全性の評価という重要な役割があるので、それが認められているかどうか、というのはその治療を選択すべきかの指針の一つであり、決してなんでも承認されるのが正しいとも限りません。

ただし、単純にデータが足りなくて申請に至らないというケースはあり得るので、仮にこういったオプション的な検査や治療法が現時点で保険適用にならなかったとしても、先進医療として一部は混合診療を認める形が取られている事例がありますので、エビデンスがまだ不十分なものは条件的にはそれに該当させることが出来るのではないかと考えています。

そもそもこれは「一連の診療」をどこと定義するかにもよるので、上記で書いたような検査と採卵・移植周期は分けられますしね。

まとめ

ということで、ざっくり言いたいのはこんなこと。

  • 助成金の考え方からするとおそらく体外受精・顕微授精といった処置部分をメインに保険適用するはず
  • その時に同一周期(一連の診療)で使われる薬剤などが保険適用外じゃ混合診療になってしまう
  • でもそもそも不妊治療を適応とした薬剤や機器は薬事承認を取得しているケースがほとんどなので、それを理由に保険適用外にするのはあり得ない
  • 一部適応外処方になっているものもあるが、二課長通知で承認の道が開けるはずである
  • 新進の検査などは有効性の判断が出ずに保険適用外として残ってしまう可能性はあるが、ほとんどが「検査」系なのでそもそも「一連の診療」じゃないんじゃないの?
  • もし一連の診療となってもいわゆる先進医療として混合診療を認める形式に持ち込めるはずだ

ふぅ。なんか小難しい感じになってしまって申し訳ない・・自分でも段々何を書いてるのかわからなくなってきた…が、

とりあえずこの記事を書いている目的は「保険適用」とひとくちに言っても、ここまでカバーされないと意味がないって、当事者はわかってますからねー!実態が伴わない「保険適用にした」という口だけで誤魔化すのとか絶対無理だからね!ということをアピールしときたいという意図ね。(厚労省の方の目に触れるかは知らんが・・)

でもここまで現実的な部分を考えられるフェーズにあるということがそもそも嬉しいことではありますね。私の知識もまだまだなので、もっと勉強して保険適用については完全論破できるよう準備してまいりたい所存です。

長くなってしまったので、診療報酬については別記事でまた書くことにします!