めありずむ

不妊治療の保険適用と理解促進に取り組むブログメディア(時々雑記)

治療内容だけじゃない、不妊治療が辛い理由

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今日は不妊治療が身近じゃない方には想像すら難しいと思われる「不妊治療の何がそんなに辛いのか?」を少しでもご理解いただけるように私自身の経験を書いてみたいと思います。

治療内容自体が酷なのは大前提

今回は直接的な治療内容については基本的に触れていません。しかし、そもそも治療自体がかなりキツイ、ということは忘れてはなりません。

さな吉さんが書かれているブログ記事がとても具体的で(涙する人続出の良記事!)後主人だけじゃなく一般の方にもぜひ知っていただきたい内容なのでシェアさせていただきます。

修行僧も真っ青の精神的な辛さ

自分の行いのせいで妊娠できない人なんていない

私が知る不妊治療者の多くは、極めて普通の出産適齢期の女性です。太ってるでもなく、ひどい食生活でもなく、昼夜逆転生活でもなく、タバコも吸わない。

自然妊娠する方と何も変わりません。

むしろ、自然妊娠する人よりも、健康的な生活をしているというケースの方が多いと感じます。さらに、健康診断でも何も異常はない方が多く、私の場合には月経周期、排卵さえ正常サイクルで検査でも問題がないにも関わらず、妊娠に至らない。

体外受精までやったとしても、1回、2回で授かればそれは排卵障害、ピックアップ障害、受精障害など、解消できる原因だったということでしょう。

しかし、30代で体外受精を数回やっても妊娠できない場合は、その多くが原因不明と片付けられてしまいます。本当に出口のないトンネルなのです。

日本では、海外では一般化されている治療手段の一つ「着床前スクリーニング(PGT-A)」が認可されていないことも理由になっています。

何も悪い事はしていないのに、人並みの幸せが手にできない。

それは例えるなら、理不尽で陰湿なパワハラやいじめを受けているような感じに近いと思います。そもそもなぜ自分がこんな目に遭っているのか理由がわからない。

生活習慣等とは無関係に突然発症する病気も同じですが、望む事のためなら我慢できるだろう、という話とはちょっと違うのです。

そしてとてつもない自己否定感の波が襲う

そんなわけで、不妊治療者のベースにあるのは、いったいなぜ?どうして?という底知れぬ疑問です。

自分が決して一般と比較して身体に悪い事などしていないのに、望むにせよ望まないにせよ多くの人がすんなりできることが何年かけてもできない。まるで自分が欠陥品であるかように感じますし、どうしても自責の念に駆られます。

これだけ打ちのめされて、自己否定を繰り返し、それでも身体的には絶対無理とは言えない、いつまでこの状態が続くのかも、最終的に願いが叶うのかも全く見えない、という精神状態。

それと同時に一生懸命働いて得たお給料は、初めからなかったかのように、湯水のごとく消えていく。そして、誰も助けてくれない。これほどの仕打ちがあるでしょうか・・・。

しかも、それが「病気」と認められたなら周囲も理解を示し、制度的にも心情的にも、気遣いをしてくれるでしょう。しかし、日本の不妊症は「病気じゃない」とされ、保険診療にもなりません、そのために周囲の理解も進みません。これでは「弱者を切り捨てる」社会と同じですよね。

時間的・金銭的・物理的制約

フルタイムで働きながら納得できる不妊治療生活をするのは物理的に無理

不妊治療費用は目玉が飛び出るほど高額です。

それが保険適用外のため自己負担で、自治体によっては助成金があるものの所得制限で対象外となったり実際に助成される金額も決して十分ではありません。

2018年に行なわれた調査では不妊治療にかかった平均費用は約200万円という結果が出ていましたが、実際には30代中盤でもすでに300~500万円近くかかっている方もたくさんいます。

一般人なら治療費を稼ぐには働くしかありません。

そのため多くの人はフルタイムで仕事をして、有休は通院に充てるために消化され、場合によっては出勤よりも早い時間から病院に行くという生活をすることになります。

仕事や家事に加えて、移動も含めた通院、運動、ストレッチ、栄養を考えた食事、温活、鍼灸、治療法や妊娠のための情報収集や整理、決まった時間の投薬・服薬、十分な睡眠時間、漢方、サプリ・・・正直、理想とされる生活をするには時間が足りなすぎます。

金銭的な理由で働く必要があるのに、休みがちだと迷惑だと言われ辞めるざるを得なかったりします。

なぜこれだけ多くの人が治療と仕事の両立ができずに退職に追い込まれるのか?それは、「一般の方が考える以上に治療関連に要する時間が多い」のが理由の一つだと思います。

月に数回通院するだけなら、他の病気の人だっているし、みんな働いてるよ?という簡単な話じゃないんです。予定も身体の状態次第なので直前まで決まりませんし、混雑する病院ならば2~3時間待ちも当たり前です。

そして、仕事を辞めてしまった場合、やはり経済的に治療を続ける事が困難という状況になってしまうのです。まさに八方塞がり。

不妊治療戦士が闘っているもの

  • 妊娠できない自分への憤りとの闘い
  • 治療法や自分の選択の正しさを疑う気持ちとの闘い
  • リセットした時、陰性だった時のショックとの闘い
  • 妊娠できないかもしれないという不安との闘い
  • 一生懸命働いて得た給与が湯水のように消えていく虚しさとの闘い
  • いつまでこの状態が続くのかという絶望感との闘い
  • 自分が身体的に欠陥品であると感じる自己否定感との闘い
  • 適齢期なら簡単に出産できるものと思っている世間の風当たりとの闘い
  • 親や親戚からのプレッシャーや申し訳なさとの闘い
  • 他人の妊娠を平常心で祝福できないことに対する罪悪感との闘い
  • 身体によくない食べ物、飲み物、やりたいことへの欲望との闘い
  • 欲しいもの、行きたいところより治療を優先することへの虚無感との闘い
  • よもぎ蒸し、鍼灸、漢方、サプリ・・何もかもはできないことへの葛藤との闘い
  • 通院時間捻出のための業務量との闘い
  • どんなにつらくても仕事や人前では普段通りにしなきゃという責任感との闘い

ほんとキリがないですよ。もう毎日毎時、何かと闘ってる状態です。私の場合、こんな状態がもう3年以上続いています。正直、精神的にはかなりキツく、浮き沈みもあります。

周囲との温度差や理解不足

治療の事をなかなかオープンにできない

それだけの精神状態に追い込まれているにも関わらず、直接の上司はともかく周囲には治療のことを言っていないという方がほとんどです。

その理由は、「不妊治療の存在、大変さが一般的に周知されていないこと、治療が必要な疾病であるという理解が進んでいないこと」にあります。実際、不妊治療をしていると話したことで好奇の目に晒されれること、嫌味を言われることは往々にして起こっています。

私の個人的な経験としては、少し治療をしていることを子持ちの友人に話したときに「でも子育てだって大変だしつらいことあるよ、不妊治療だけが大変なわけじゃないと思うし、つらいってばっかり言ってもしょうがないよね~」と言われたことがありました。

彼女も深く考えた発言ではなかったのかもしれませんが、私は「不妊治療をしている、治療はこれだけ大変だ」という話は受け手によっては不幸や大変さをアピールしているだけに聞こえるのかもしれない、と感じました。

もちろん受け手にもよりますが、どれだけ明るく面白おかしく話しても不妊治療がパンチの効いた内容には変わらないような気がします。

一方で治療が実を結ぶとは限らないことから、理解をもって応援してくれるような方にも言いづらいという面もあります。協力的な相手だからこそより気を遣わせてしまうとか、落胆させてしまうことが怖いという感情です。

カミングアウトできないのは、治療しているだけでも相当傷ついているのに、これ以上のダメージを受けたくないからなのです。

結果として、事情を知らない人は悪気はないので、心無いことを言ってきますし、その事情を考慮した行動もしてくれないものです。そうして私たちの多くは特に仕事の場では、変に思われないよう普段通りにしなければという暗黙の重圧に耐えることになります。

副作用で体調が悪い日も、妊娠判定が陰性だった日も、流産が確定した日も、受精卵が凍結できなかった日も、決して勘ぐられることのないよう涙を堪えて過ごしています。

「子どもは産めてあたりまえ」という概念

2、30代の健康な男女が結婚したら出産して家庭を築くのは「あたりまえ」と思っている人があまりに多い。自分も周囲もそうだったから、それが当てはまらないケースなど想像すらしたことがないし、そんな世界は見えていないものです。

そういった「無知な常識」に捉われている方が多いので、「妊娠できないなんてありえない」という先入観から気安く「夫婦生活が足りないんじゃない?」「そのうちできるわよ」「治療止めたらできるって聞いたよ」「体外受精すればすぐ妊娠するんでしょ?」と信じられないような軽口を叩かれたり、「できて当たり前」というプレッシャーを生むことになっています。

さらにこの「子どもを産めてあたりまえ」の概念は、「子ども持たない夫婦」「多様な家族形態」という異なる生き方の選択を狭めることになり、不妊治療の先の選択肢の少なさが患者をより追い込むことになっていると思います。

どうすれば報われるのか?

不妊治療がどれだけ精神も肉体もすり減らすものか、どれほど辛い日々を送ることになるのか、少しでもご理解いただけると幸いですが、結局、最終的な報いはもちろん「妊娠・出産する」ことしかありません。

誰もができるなら不妊治療なんて受けたくないですし、極論ですが、目指していることは一つだから。

ただ、こうなればもっと治療が受けやすくなる、心の負担が少しは軽くなる、と思われる事はあります。

世間一般の理解を促進するためには、不妊治療が保険適用されることが、そのベースを作る最も現実的かつ有効な方法だと思います。

  1. 不妊治療費の保険適用 > 経済負担を軽くする事に加えて、他の病気と同じように治療が必要な「疾病であること」を世間一般に認知させること
  2. 着床前スクリーニングの正式認可 > 日本の不妊治療の治療効率を向上させる今最も有効な手段だと思います、産科婦人科学会の認可が待たれます
  3. 不妊治療休暇、時短勤務制度の整備 > 産育休暇や傷病休暇と同じことです、従業員の不妊治療に協力しない事業者がないようにすること
  4. 正しい知識・教養の啓蒙 >無知ほど人を傷つけるものはないので、不妊症について「厳しい現実」も正しい理解が進むよう、国もメディアも動くこと
  5. 養子・里親制度の拡充 > 自分で産まずとも子どもを育てる選択肢として、養子・里親という制度がもっと広まること

同情してくれ、という話ではありません。

病気の治療をすることと同じように、不妊治療を受けながら生活することが特別なことではない世の中になってほしい、自然妊娠できる人と同じように働いて生活したい、そんなささやかな願いが、早くたくさんの人に届きますように。

 

お決まりの宣伝みたいになっていますが、不妊治療の保険適用については以下のシリーズで詳しく取り上げています。こちらもご覧いただけると嬉しいです。まとめになっているので第5回だけでも良いです!