めありずむ

オリジナルの記事にこだわって、等身大かつ独自視点で不妊治療まわり(と、時々趣味)のことを発信しています。

不妊治療の辛さは治療内容だけじゃない

f:id:sweet-honey83:20180615104917p:plain

今日は不妊治療が身近じゃない方には想像すら難しいと思われる「不妊治療の何がそんなに辛いのか?」を少しでもご理解いただけるように私自身の経験を書いてみたいと思います。

治療内容自体が酷なのは大前提

今回は直接的な治療内容については基本的に触れていません。しかし、そもそも治療自体がかなりキツイ、ということは忘れてはなりません。

さな吉さんが書かれているブログ記事がとても具体的で(涙する人続出の良記事!)旦那さんだけじゃなく一般の方にもぜひ知っていただきたい内容なのでシェアさせていただきます。

修行僧も真っ青の精神的な辛さ

自分の行いのせいで妊娠できない人なんていない

私が知る不妊治療者の多くは、極めて普通の出産適齢期の女性です。太ってるでもなく、ひどい食生活でもなく、昼夜逆転生活でもなく、タバコも吸わない。自然妊娠する方と何も変わりません。むしろ、自然妊娠する人よりも、健康的な生活をしているというケースの方が多いと感じます。さらに、健康診断でも何も異常はない方が多く、私の場合には月経周期、排卵さえ正常サイクルにも関わらず、妊娠に至らない。

体外受精までやったとしても、1回、2回で授かればそれは排卵障害、ピックアップ障害、受精障害など、解消できる原因だったということでしょう。しかし、30代で体外受精を数回やっても妊娠できない場合は、その多くが原因不明です。染色体、遺伝子異常と言われてしまえば、何もすることができません。

何も悪い事はしていないのに、人並みの幸せが手に入れられないのです。

それは例えるなら、理不尽で陰湿なパワハラやいじめを受けているような感じに近いと思います。そもそもなぜ自分がこんな目に遭っているのか理由がわからない。生活習慣等とは無関係に突然発症する病気も同じですが、望む事のためなら我慢できるだろう、という話とはちょっと違うのです。

そしてとてつもない自己否定感の波が襲う

そんなわけで、不妊治療者のベースにあるのは、いったいなぜ?どうして?という底知れぬ疑問です。

自分が決して一般と比較して身体に悪い事などしていないのに、妊娠できない。望むにせよ望まないにせよ多くの人がすんなりできることが何年かけてもできない。まるで自分が欠陥品であるかように感じますし、どうしても自責の念に駆られます。

前にもたとえ話で書きましたが、繰り返す治療は、まるで就活の面接に落ち続けるような、大好きでうまくいっていた恋人に毎月フラれるような状態です。自分の何が悪かったのか、どの行動がいけなかったのか、どの選択が間違っていたのか、ずっと自問自答を繰り返します。

これだけ打ちのめされて、自己否定を繰り返し、それでも身体的には絶対無理とは言えない、いつまでこの状態が続くのかも、最終的に願いが叶うのかも全く見えない、という精神状態。それと同時に一生懸命働いて得たお給料は、初めからなかったかのように、湯水のごとく消えていく。そして、誰も助けてくれない。これほどの仕打ちがあるでしょうか・・・。

しかも、それが「病気」と認められたなら周囲も理解を示し、制度的にも心情的にも、気遣いをしてくれるでしょう。しかし、日本の不妊症は「病気じゃない」とされ、保険診療にもなりません、そのために周囲の理解も進みません。これでは「弱者を切り捨てる」社会と同じですよね。

時間的・金銭的・物理的制約

フルタイムで働きながら納得できる不妊治療生活をするのは物理的に無理

不妊治療費用は目玉が飛び出るほど高額です。体外受精1回で、海外旅行はもちろん、高級エステやマンツーマン英会話数ヶ月分、大型ハイビジョンテレビもハイブランドの高級バッグもちょっとした中古車も買えるくらいの費用がかかります。一般人なら治療費を稼ぐには働くしかありません。

そのため多くの人はフルタイムで仕事をして、有休は通院に充てるために消化され、場合によっては出勤よりも早い時間から病院に行くという生活をすることになります。

仕事や家事に加えて、移動も含めた通院、運動、ストレッチ、栄養を考えた食事、よもぎ蒸し等の温活、鍼灸、治療法や妊娠のための情報収集や整理、決まった時間の投薬・服薬、十分な睡眠時間、漢方、サプリ・・・正直、理想とされる生活をするには時間が足りなすぎます。

金銭的な理由で働く必要があるのに、働いているがために時間的な制限で、できることを限界までやりきれていない、というもやもやはほとんどの方が抱えている問題だと思います。

なぜこれだけ多くの人が治療と仕事の両立ができずに退職に追い込まれるのか?それは、「一般の方が考える以上に治療関連に要する時間が多い」のが理由の一つだと思います。

月に数回通院するだけなら、他の病気の人だっているし、みんな働いてるよ?という簡単な話じゃないんです。そして、仕事を辞めてしまった場合、やはり経済的に治療を続ける事が困難という状況になってしまうのです。まさに八方塞がり。

何年にも渡る治療は自分らしささえ奪っていく

私は昔から旅行が好きで、学生自体はバイトでお金を貯めては海外に行くという生活を繰り返していましたし、社会人になってからも年に1.2回海外に行く楽しみのために働いているようなものでした。

しかし、治療を始めてからの3年間で海外に行ったのは友人の結婚式1度きりです。正直治療しながら海外旅行は、金銭的・スケジュール的理由でかなり厳しいのが実情です。誘発の注射だけでもアジアなら数日間旅行できますし、採卵・移植ならヨーロッパ周遊に1週間行けます。逆に、今までのように旅行をして治療もするほどの経済的なゆとりはありません。

しかも、治療をしているといつ通院になるのかスケジュールも読めず、妊娠するかもしれないと考えると旅行の予定なんて正直立てられないのです。一番の趣味と言ってもよかった海外旅行は諦めざるを得ない状況になりました。

通常の妊娠であれば、そこからの数年間海外旅行にいけないことは全く寂しいことではありません。子どもはそのうち大きくなりますし、海外旅行では得られない幸福があることは間違いないからです。

でも不妊治療はそんな楽しみも、いいお金の使い方をしたという実感も、好きな事を通した自分らしささえ奪っていると感じます。

周囲との温度差や理解不足

どんなに辛くても治療の事をオープンにできない

それだけの精神状態に追い込まれているにも関わらず、直接の上司はともかく周囲には治療のことを言っていないという方がほとんどです。

その理由は、「不妊治療の存在、大変さが一般的に周知されていないこと、治療が必要な疾病であるという理解が進んでいないこと」にあります。実際、不妊治療をしていると話したことで好奇の目に晒されれること、嫌味を言われることは往々にして起こっています。

私の個人的な経験としては、少し治療をしていることを子持ちの友人に話したときに「でも子育てだって大変だしつらいことあるよ、不妊治療だけが大変なわけじゃないと思うし、つらいってばっかり言ってもしょうがないよね~」と言われたことがありました。

彼女も深く考えた発言ではなかったのかもしれませんが、私は「不妊治療をしている、治療はこれだけ大変だ」という話は受け手によっては不幸や大変さをアピールしているだけに聞こえるのかもしれない、と感じました。

カミングアウトできないのは、治療しているだけでも相当傷ついているのに、これ以上のダメージを受けたくないからなのです。

結果として、事情を知らない人は悪気はないので、心無いことを言ってきますし、その事情を考慮した行動もしてくれないものです。そうして私たちの多くは特に仕事の場では、変に思われないよう普段通りにしなければという暗黙の重圧に耐えることになります。

副作用で体調が悪い日も、妊娠判定が陰性だった日も、流産が確定した日も、受精卵が凍結できなかった日も、決して勘ぐられることのないよう涙を堪えて働くしかないのです。

未体験のことはよほど考えないと理解できる想像力がない

人は基本的に自らの実体験や2次元からの疑似体験を通じて物事を理解していると思います。逆に未知のことは、よほど想像力を膨らませて考えない限り表面上はともかく内面まで理解することは難しいと思います。

2、30代の健康な男女が結婚したら出産して家庭を築くのは「あたりまえ」と思っている人があまりに多い。自分も周囲もそうだったから、それが当てはまらないケースなど想像すらしたことがないし、そんな世界は見えていないものです。

そういった「無知な常識」に捉われている方が多いので、「妊娠できないなんてありえない」という先入観から気安く「夫婦生活が足りないんじゃない?」「そのうちできるわよ」「治療止めたらできるって聞いたよ」「体外受精すればすぐ妊娠するんでしょ?」と信じられないような軽口を叩かれたり、「できて当たり前」というプレッシャーを生むことになっています。

さらにこの「子どもを産めてあたりまえ」の概念は、「子ども持たない夫婦」「多様な家族形態」という異なる生き方の選択を狭めることになり、不妊治療の先の選択肢の少なさが患者をより追い込むことになっていると思います。

どうなれば患者は報われるのか?

不妊治療がどれだけ精神も肉体もすり減らすものか、どれほど辛い日々を送ることになるのか、少しでもご理解いただけると幸いですが、結局、最終的な報いはもちろん「妊娠・出産する」ことしかありません。

誰もができるなら不妊治療なんて受けたくないですし、極論ですが、目指していることは一つだから。

ただ、こうなればもっと治療が受けやすくなる、心の負担が少しは軽くなる、と思われる事はあります。世間一般の理解を促進するためには、不妊治療が保険適用されることが、そのベースを作る最も現実的かつ有効な方法だと思います。

  1. 不妊治療費の保険適用 > 経済負担を軽くする事に加えて、他の病気と同じように治療が必要な「疾病であること」を世間一般に認知させるために必要
  2. 不妊治療休暇、時短勤務制度の法律化 > 産育休暇や傷病休暇と同じこと、これを制度化し従業員の不妊治療に協力しない事業者がないようにするために必要
  3. 正しい知識・教養の啓蒙 >無知ほど人を傷つけるものはないので、不妊症について「厳しい現実」も正しい理解が進むよう、国もメディアも動くべき

同情してくれ、という話ではありません。病気の治療をすることと同じように、不妊治療を受けながら生活することが特別なことではない世の中になってほしい、自然妊娠できる人と同じように働いて生活したい、そんなささやかな願いが、早くたくさんの人に届きますように。

 

お決まりの宣伝みたいになっていますが、不妊治療の保険適用については以下のシリーズで詳しく取り上げています。こちらもご覧いただけると嬉しいです。まとめになっているので第5回だけでも良いです!