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不妊治療費が保険適用にならない謎を紐解いてみよう

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不妊治療費の保険適用を訴える目的でブログを初めて9ヶ月が経ちました。この間に、オンライン署名の数は1800名を突破しました。ご協力いただいている皆様、ありがとうございます!まだまだ拡散する力が必要なので、引き続きよろしくお願い致します!

今日は、不妊治療の保険適用について障壁のうち、結局なぜ議論が進まないのか?を仮説も含めつつざっくり紐解いてみよーと思います。

そもそも不妊治療を保険適用にすべき理由は何か?

  1. 「不妊症」は医療行為が必要な病気!
  2.  不妊治療はもはやメジャーな病気!(日本の6組に1組が不妊と言われ、治療が必要な層は推定100万人の可能性があるし、治療法もある程度確立されている)
  3.  経済負担が半端ない!(体外受精などの高度生殖医療は1回40~50万円と高額で、患者の費用負担の平均は150万円~200万円という調査結果が多い)
  4.  この事実を無視している日本は遅れすぎ!(上記の理由から欧州を中心とした多くの先進国では保険適用対象とされている)
  5.  助成金は中途半端!(現行の助成金制度は所得制限など患者の実情と乖離した制度で非常に中途半端、出産一時金は全員に出るのにおかしくないか?)
  6.  見直せば社会保障で全然捻出できる金額!(不妊治療を保険適用にしたとしても現状の高齢者医療費の数%にしかならないと試算される)
  7.  国は子ども増やしたいんでしょ?子化が社会課題という認識があるならば出産・子育てのポテンシャルが最も高い「子どもを産みたい層」に対するサポートは真剣に議論されるべき)

ここまで条件が整っているにも関わらず保険適用にならないのって、正直あまりにも違和感があると思うんですよね。

保険適用への反対意見(とそれに対する反論)

で、この議論をすると必ず出てくる反対意見として主に言われるのは大きくこの4つじゃないかと思います。

  1. 社会保障費をこれ以上無駄遣いできない > だから国の状況に合わせて適正化しなきゃいけなんじゃないの?なぜ高齢者医療を見直して本気でメス入れないの?それでいくら捻出できるか理解してます?
  2. 助成金が出ているのだから十分だろう > え?どこらへんが十分ですか?患者の声聞こえてます?ちゃんと検証されてますか?出産一時金は所得制限せずに、不妊治療助成は所得制限する根拠は何ですか?
  3. 妊娠率がそれほど高くない治療に税金を使うのは無駄 > だからさ!保険適用の議論の中で治療法や培養技術を標準化しないといけないし、もっと効果の上がる技術(着床前スクリーニングや卵子提供等)を承認すべきだし、保険適用で妊娠率の高い若い世代でも治療を受けられるようにしなきゃいけないんじゃないの?しかも、不妊治療より高額な抗がん剤の奏功率ご存知ですか?効果が低い治療は税金の無駄遣いという発言の意味を理解されてますか?やることやってから無駄かどうか決めてよね
  4.  各クリニックが成功実績(費用対効果)を重視することで患者の選別に繋がる懸念 > 患者側が損するよ的な脅しだと思うんだけど、その回避策の一手が着床前スクリーニングや卵子提供だと思うんですけどね。そして、そもそも複数のクリニックが公正に「妊娠は難しい」と判断するならば、それは患者の切捨てというよりは現代医療の限界であって、次のプラン(例えば養子とか、海外での治療とか、別のライフワークとか)を考えるべきタイミングじゃないの?

私見も入っておりますが、まったくもって、実態を理解している人が言うような発言じゃないと思うんですよね。私もバックグラウンドはだいぶ調べたので、ここはコテンパンに論破できる自信がある(笑)

保険適用の議論を進める手段はあるのか?

で、いざ本丸に切り込むと、保険適用の議論を本格化させるには2つの方法が現実的かなと。

  1. 政府がトップダウンで実行を指示する
  2. 医師会など一定の権力と厚労省などの政府機関とのパイプがある組織が提言する

今の日本政府は基本的に(現役世代の)国民の声によって大きく左右されるような政府ではありません。過去に国民生活に直接影響するような法案を作り通してきたきっかけは2の方が大きいのが実態だと思います。

同時に、仮に世論などを受けて1のトップダウン方式で検討された場合でも、重要法案に関しては必ず関連する組織(医療に関するものは医師会、商取引なら経団連とかそういう感じ)に「お伺いを立てる」というのが一般的な慣習のようです。

ということは、不妊治療の保険適用に関しても医師会がどう考えているか?というのは非常に大きいポイントになると言っていいわけです。

当の不妊治療専門医の視点ではどうなのか?

全体的な風潮としては積極的な賛成派は少ないだろうと想定しています。

  • 保険適用されると医療行為毎に「点数=料金」が定められてしまうため、現在のように自由に利益をコントロールできなくなる
  • 保険適用の中で治療法が標準化されたり均一化されることで自クリニックとしての差別化ができなくなる、従来の治療理論が崩れてしまうなどの不都合が生じる
  • 着床前スクリーニングなど現状の不妊治療体制を大きく変える変化が生じると既存の利益構造(病院経営)に影響する可能性が高い

誤解を恐れずに言えば、不妊治療は「医療行為」というよりは「ビジネス」としての側面が非常に強い分野です。

私自身、医療に近い業界で仕事をして、友人にも何人か医師がおり、その中で聞こえてくる話として残念ながら耳を疑うような話を聞いたことは一度や二度ではありません。

  • 婦人科なら「不妊治療を扱うと儲かる」という話は医師の間では周知の事実(らしい)
  • 体外受精による妊娠率がもし現状の2倍~3倍高くなると、患者一人あたりの単価が減少し、専門クリニックの売上は大幅に減少するだろうという想定が成り立つ(らしい)

このような話は、別に医療業界に限った話ではないですけどね。既得権益があるとその受益者は決して現状を変えたがらない、変化を嫌うという構図はまぁよくある話です。

大抵は圧倒的な技術革新とかを成し遂げた新興勢力がそこを打破していくものだとは思っていますが。

不妊治療専門医の見解

実際どうなのか生の声を知りたいと思ったのですが、WEBで調べた限り、拾える情報はかなり少数でした。やはり不妊治療専門医は保険適用に関してあまり積極的には発言していない(大手を振って賛成はしずらそう)ようです。

リプロダクション東京 松林医師

リプロの松林先生は、あくまで私見とした上でブログで以下のように書かれています。

このように体外受精が保険適応になるには超えなければならないハードルがかなり高いと思いますが、私は、体外受精を含めた不妊治療は保険適応になるべきだと考えています。質問者さんの言う通り、癌治療や透析など毎月100万円単位の医療費が極めて多くの方に公費投入の形で使われています。その多くは高齢者です。

高額療養費制度を利用している方はかなり多いはずですし、これは毎月のことです。体外受精に50万円かかったとしても、毎月ではありません。生殖年齢の女性の中で実際に体外受精が必要になる方の人数を計算したとしても、高額療養費制度の額とは比べものにならないくらい低い額だと思います。日本の将来に必要なのは、子供達です。

出典:Q&A1118 ☆体外受精が保険適応にならないのは何故? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

浅田レディースクリニック 浅田院長

浅田レディースの浅田先生は、患者からの「保険適用になると良いとお考えですか?」という質問に対して、保険適用よりも産婦人科の診療報酬の仕組み自体を見直すべきという回答をされています。反対と言っているわけではありませんが、保険適用すべきという考えではないようです。(ちょっと質問に対して回答がズレているので真意は分かりませんが・・)

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出典:浅田レディースクリニック監修- 不妊治療のQ&A 体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)編 /AMH・不妊症~妊娠の主役はたまご

竹内レディースクリニック 竹内院長

e-doctorのインタビュー記事でお話が載っているケースもありました。

 ■不妊治療の課題(①患者様の経済的負担)
 自治体により多少の違いはあるが、人工授精や体外受精などは保険が適用できないので患者さんの負担は大きい。しかし食生活の変化などで、不妊が女性だけの原因でなく、男性に原因がある場合も多くあり、不妊治療を希望する人は増加している。
「少子化対策の問題もありますし、例えば体外受精3回までは保険適用など、上限を決めて保険適用にもっていくべきでしょうね。」

出典:鹿児島県姶良郡 産婦人科 開業医インタビュー|e-doctor

仮説:保険適用を阻止しているのはやはり医師会?

ちょっと複雑なんですけど、不妊治療の保険適用には2段階のハードルがあるのかなと思います。1つは産婦人科医(学会)、1つは医師会。

乱暴な書き方をすれば結局は(一部の)医者は「自分の経営利益を優先している」ということに尽きてししまうのかなと。

  • 不妊治療専門医はクリニック経営の観点からは好きに料金設定できる自由診療の方が「儲かる」わけで、保険適用や妊娠率の向上が見込める着床前スクリーニング、卵子提供等の変革はどちらかというと「儲からなくなる」要素が強いので乗り気じゃない
  • 医師会は主に内科医の権力が強い傾向にあり(絶対数も多いし)、不妊治療の保険適用によって他の分野の診療報酬が下げられたり、現在の収益源を奪われることは面白くない

そしてこれは不妊治療だけではなく、出産等の他の産婦人科領域にも言えることだと思います。

もちろんそうじゃない医師もいることは知りつつも、医者を敵に回すような極端な書き方してるので(笑)、これに反論してくれる医師がいたら、ぜひその方と協力させていただきたいくらいです。

医療も商売なので黒字経営にする必要はありますし、いい病院やいい医者が儲かるのは資本主義の原理から言えば当然だと思います。でもそれは不妊治療に限った話ではないはず。妥当な診療報酬設定がなされ、本当にエビデンスがないような先進医療は保険適用外にすればいいはずです。

この現状を打破する方法はないのか?

結局、医師を味方にできないのであれば、国を動かすには世論を動かすしかないのだと思います。患者側の声としてひたすら問題提起するしかないのです。

オンライン署名はその一手ではありますが、政府機関への投書などを続けること、SNS等で発信する人が増える事、選挙で同世代の政治家を増やす事などなどまだまだできることがあると思います。

というか、手をこまねいているわけにはいかないので、今はそれを続けるしかない。

みんなが「自分の利益」だけじゃなくて「次の世代の未来」に思いを寄せることができたらいいですよね。

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