めありずむ

不妊治療の保険適用と理解促進に取り組むブログメディア(時々雑記)

保険適用の議論が進むかどうかの鍵はPGT-Aにある

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このブログでは「不妊治療の保険適用(経済負担低減)」と、「PGT-A(着床前診断)の認可」という2つの論点を並列の形で扱っていますが、実際は「2つで1つ」だよね、という話です。

保険適用になるとはどういうことか?

保険適用されるというのは大きくは2つのことを意味すると思います。(実際の条件はいろいろありますが)

  • 各医療行為や薬剤に対して診療報酬・保険薬価が設定され、どのクリニックでも一律の価格設定になること
  • 保険診療により、患者の自己負担が3割になること(不妊治療対象年代の場合)

診療報酬の決め方等は長くなりそうなので別途記事にすることにします。

どのクリニックに行っても同じ薬剤を使用すれば同じ金額だし、同じ治療を受ければ同じ金額がかかることになり、そのうえ3割負担になるわけです。

イメージだとこんな感じですね。オプションとか通院とかホントはもっとたくさんありますが多すぎるのでシンプルにしました。

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保険診療に適しているかの判断が最大の論点

さて、不妊治療を保険適用化していくためにはいくつかKEYとなる論点があると思いますが、最も大きいのは「どの医療行為を保険診療とするか」の判断だろうと思います。

ここを間違えると性別適合手術の件と同様に全く意味のない制度になってしまう。

その理由は「一連の診療において保険診療と自費診療を組み合わせた混合診療は認められずすべて自費診療となる」という現行ルール。(一応救済措置として先進医療に認定されたものはOKというのがありますが)

一方で現在の不妊治療においては高額なオプションやエビデンスが確立されていない検査をどんどん勧められることで費用が高額化しているという問題点も指摘されており、本当に必要な治療は何なのか?という部分があまり追求されていない問題は保険適用の議論や臨床研究の中で明らかになっていくのではないかという期待もあります。

特に課題となるのが高額な追加オプション

実際に保険適用に向けて動くためには、厚労省や中医協(中央社会保険医療協議会)がART(高度生殖補助医療)の各医療行為をひとつずつ保険診療とするか、先進医療とするか、そのどちらにも値しない治療法かを判別(評価)していくことになります。

卵巣刺激・排卵抑制・採卵・凍結・移植のベーシックな部分はそれぞれ治療法として他に代替する選択肢がなかったり有効性がすでに確立されているので、もちろん保険診療の対象になるでしょう。

問題はいわゆる「オプション」と呼ばれているような施術や検査です。

採卵~移植に関連する部分だと、Piezo-ICSI、卵子活性化法、アシスティッドハッチング、エンブリオグルー、SEET法やスクラッチ法、ERA検査や子宮内膜炎、子宮収縮検査といったあたりが一般に広く行なわれるようになってきている医療行為または検査になるかと思います。

それに加えて、不育症や着床不全の検査というのもあります。(こちらは「一連のARTの治療」とは切り離された検査ではあるのでARTとの混合診療にはあたらないと思われますが)これも高額な検査になるので、その有効性を判断し保険診療の検査とするかの判断が必要になると思います。

保険適用で最も難しいのが、このオプション系の治療や検査の有効性をどう判断するかでしょう。

保険適用の鍵がPGT-Aにある可能性は高い

その有効性を可能な限り真っ当に評価するためには、「正常胚を戻している」という前提の中でその治療法が本当に有効かを判断する必要があります。というか、そうじゃないともはや評価にもなりません。

なぜなら、妊娠には「胚に異常がないこと」と「子宮などのその他に異常がないこと」の両方の因子が常に条件になるからです。

「胚は正常である」という前提がないと、仮に臨床試験を実施しても常に受精卵因子による成否の可能性が捨てきれず、公正な評価が出来なくなってしまいます。

つまり、PGT-Aは不妊治療の保険適用に向けた議論をするうえではほとんど必須の前提条件と言っても過言ではない。

裏を返すと、PGT-Aが認可され「正常胚を移植する」という治療法の選択がある程度スタンダードになると、保険適用の足かせとなっていた(はず)のいろんなことが一気に外れる可能性は高いと思います。

例えば高度生殖医療の有効性の議論も、もはや有効性が認められないとは誰がみても言えないレベルになるでしょうし、正常胚を移植するというベースがある中で他のオプション(特に子宮内環境に関するもの)の真の有効性が評価できることになります。

まさか「自費診療で儲けたい」不妊治療専門医がそこまで計算の上でPGT-Aの認可を強く要望していないとは考えにくいですが(←失礼・・・笑)

PGT-A認可の鍵が保険適用にある可能性も高い

ニワトリ-卵の議論になってしまいますが、上記の一方でPGT-Aの認可を加速させるには、保険適用という議論がきっかけになる可能性は高いと思い増す。

結局、保険診療にするならば、その費用対効果を高める目的でPGT-Aの認可をすべきという考え方が一緒に付いてくることは自然な流れ。

国民のお金が使われるとなれば、費用対効果をシビアに評価する必要がある。当然といえば当然でしょう。

そうなれば、移植あたりの妊娠率が大きく向上し、流産率を減らせる技術があるなら選択肢にすべきであるという論調になることは間違いないはず。

順序という意味ではPGT-Aが先にくることが妥当ですが、きっかけはどちらが先でもいい、PGT-Aと保険適用は切っても切り離せない2つで一つなんだろうと思います。

ちなみに厳密にはPGT-Aそのもので胚がダメージを負わないという条件もあるものの、こちらは現時点の技術的な限界点でもあるため除外しました。