めありずむ

不妊治療・育児・Mr.Children・手帳・雑記ブログ

不妊治療と仕事を両立できないような会社はどっちにしろ辞めていいと思う。

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やや極端なことを言っているという自覚はありますし、職種や雇用形態など人によって事情は異なるので、すべての方に当てはまるとは思いませんが、それでも私が自分や知人の様子を見てきて辿り着いたひとつの解を記したいと思います。

*写真:PIXTA

mainichi.jp

不妊治療と従来の仕事の両立を諦めた人は、合計で35%に上る。先日公表された厚労省の調査結果です。私も、KLCなどの有名クリニックへの転院を検討した段階でこのまま同じような職務を継続するのは「無理だ」と感じました。 

どんな仕事をしているか?

私は外資系の会社で、企画職をしています。仕事内容としては、マーケティングとか、経営企画というジャンルで、市場分析や売上予測、新サービスの開発からプロジェクト運営、販促活動、グローバルへの報告まで何でも手がける部署です。

ここまででイメージしていただけると思うのですが、「忙しい」そして「ルーティンがない」「思考系」の職種です。要は、仕事は山ほどあるけど「時間」よりは「成果」が重視される業務だと思っています。 

会社における制度面と活用の実態 

それなりの規模の会社ではありますので、産育休などの一般的な制度はしっかりしていますし、ワーキングマザーも多い(というかむしろ優遇されている)職場です。また、フレックス制や時短勤務、在宅勤務の制度もあります。が、基本的には「お子さんがいる人・介護する家族がいる人が活用するもの」という暗黙の了解がある上に、その前提での上長承認が必要なので、当てはまらない人は活用できていないというのが実態です。

部署によって給与形態も異なり、私の知る限り金融でいうところのフロント・ミドルの部門の第一線で活躍するワーママはかなり少なく、そのほとんどは、時間で業務を捉えることができるバックオフィス系の部署に所属されています。私のいる部署でも半数(5名) は女性ですが、独身が2名、既婚子供なしが2名で、お子さんがいるのは1人だけです。

課題1.勤務体系における時間的な制約

さて、私自身も最初に書いた通り、有名クリニックに転院して同じ業務量をこなすのは不可能と分かっていました。

仮に患者数が桁違いの有名クリニックに通院すると、通院の度に2~4時間、移動も含めれば3~5時間はかかります。排卵期には1週間に3回、月合計で5-6回通院すると考えると、4時間×6回だとしても24時間、8時間勤務の3日分。つまりスケジュール次第では月に3日程度の休暇取得が必要になります。これを12ヶ月続けることになると36日。年間の有休は20日ですし、他に休まなければいけない事情も多少は発生すると考えると、半年程度で年間の有休はなくなってしまう計算になります。

  • 毎月コンスタントに3日休むだけでもリソースは約85% (17/20) に減少する。
  • しかも排卵期の診療の日程は直前にならないと決まらないため、会議やアポイントの調整が前もってできない(しておいてもリスケが必要になる)
  • 有休がなくなった後、さらに休んでも正社員として勤務を続けられるのか?
  • さらに、不妊治療以外にも体調不良や家庭の事情で休むようなことを考えると月に3日では足りないかもしれない

課題2.心理的なプレッシャーやストレスに耐えられるのか?

仕事と治療を両立する上での心理的なプレッシャーは大きく3つあると思います。

  1. 職場の同僚や上司に迷惑をかけていること(0.85人の仕事しかこなせない)
  2. 仕事と両立するがために自分の身体にとって最良の環境という自信がないこと(100%不妊治療をやり切っているといえない不安)
  3. 上記が分かっていながら治療費のためには収入が必要なこと

私の場合も、仕事で今までのように働けない上に、両立しようとするために運動する時間、鍼灸などの民間療法に割く時間、しっかり栄養価を考えた自炊をする時間、ゆっくりお風呂で身体を温めたりストレッチをする時間、そして充分な睡眠を取ること。すべてやれることをやり切ったとは言いがたい生活を続けているという「中途半端感」にとても苦しい思いをしています。

しかも、治療がすんなり進む人ならまだしも、思うようには行かないことも多く、正直精神的に参るような事ばかりです。治療疲れがあっても仕事は待ってくれないので、ちょっと休みたいな、もう仕事辞めたいなと思うことはよくあります。

とはいえ、今の収入は治療費のためには不可欠。転職してすぐ妊娠なんてことになるとエージェントとしても厳しいので、今の会社を辞める場合、パート勤務やフリー業にならざるを得ないのが現実かなとは思っていました。

私が治療と仕事の両立を勝ち取った経緯

まず、直属の上司(部長)に「不妊治療のため、今の状態で勤務を継続することは無理だ」ということを伝えました。すると「辞めて欲しくない、会社として何とかできないか上層部と掛け合うので待って欲しい」という回答を得ました。

その時点で私が仮に辞めずに残る場合には以下の状態になることを了承して欲しいと伝えました。

  • 月に3~4日は休むことになるし、それ以外に時短で帰宅するようなこともある
  • 基本的に残業は月10時間以下にしたい
  • よって、リソースは過去比で6-70%程度になると思ってほしい

なぜ「辞めるのは収入的に厳しい」と分かっていながら大胆にもそう宣言したかというと、十中八九引き止められるだろう、という算段があったからです。自慢したい意図は全くないのですが、仕事は人並み以上にはこなしてきましたし、周囲からも評価していただいていました。なので、そう簡単に「わかりました、じゃあ辞めてください」とはならないだろうという自信があっての行動ではあります。

  • 翌日には部門のヘッドから呼び出され「制度をすぐに変えることは難しいが、まずは有休を使ってその間に妊娠すればベストだし、使い切ってしまっても無給休暇にはなるけどいくらでも休みを取ってくれて構わない。それで続けてもらえないか?」という提案を受けました。
  • 社長からもお呼びがかかり「僕らとしても応援したいし、サポートするって■■さん(部門長)も■■さん(部長)も言ってくれてる。これは出産した後も同じようにぶつかる課題だし、メアリーさんならできると思うからさ、まずはやってみよう」と。
  • 部長には、「正直、他の人の10割よりも、メアリーさんの7割の方がいい」と言っていただきました。

こうして私は「会議やアポイントの日程調整が難しい」という課題以外をほぼ解消する合意ができたわけです。また、全員がこういう交渉ができるわけではないということも説明されました。必要と思われていなければ「では仕方ないですね」となる可能性も当然あるということです。

ちなみに、労働力が減るのだからお給料が減るのは当たり前だなと思うので、休みが有休を超過した場合無給扱いになるのは妥当と考えています。

強気の交渉を実現するための努力

ポイントは部長の言う「他の人の10割よりも、メアリーさんの7割の方がいい」に凝縮されていると思います。職場なり、上司なりにとって必要な人材であると認識されるだけのパフォーマンスと人間関係を構築しておけば、これくらいの交渉は十分可能ということです。(上司が公正じゃなかったり、杓子定規な組織だとちょっと難しいかもしれませんが・・・)

そんな優遇を勝ち取るために私が常日頃努力していることは以下の3点です。

  • スケジュールやタスクの変更は常に共有し「遅れてる」と思わせないこと
  • 上司や周囲の仕事を極力軽くするため「先回り」して動くこと
  • 一緒に仕事をする人には常に感謝し、陰口や愚痴を言わないこと

もしそんな交渉をするの無理!という職場だったら?

それくらいしっかり仕事はしている、と自信があるにも関わらず、治療と両立するための交渉が難しい、もしくはできなかったという場合、その会社はどっちにしろ辞めていいと思います。

■ 想定される交渉ができない理由 

評価されるべき仕事をしているにも関わらず、働き方に関する交渉ができない
  必要な人材と思われていない
    周囲に公正な評価者がいない
    仕事で求められるものが合理的ではない
    適正な人材配置や業務分担を考えられる評価者がいない
  制度などを理由にされている
    自らの判断に責任を持つ上司がいない
    多様化する状況へ対処する姿勢がない
    真の意味で従業員を大切にする組織ではない

私の知る限りではありますが、そういう組織はほぼ例外なく、働くストレスが非常に強い会社で、かつ女性が妊娠後、出産後により辛い思いをすることになり、結果的に働き続けることが難しい状況に追い込まれています。働き続けていても、すごく苦労しながらというケースばかりです。

そんな組織で我慢して働き続けてあげる必要はないと思うのです。会社が変われば同じ職種でも全然違う環境がありますし、治療や子育てに理解のある会社もたくさんあります。

治療と両立できないような職場は子育てと両立もできない

(=今我慢して乗り切っても将来的に働き続けられない)

時間的制約も、経済的な負荷も、継続年数も子育てしていく方がずっとずっと大変だと思います。それよりも小さな治療にさえ協力することができないような会社は、どこかのタイミングで必ず破綻してしまうように見えるのです。

産休明けで転職する方がやはり困難は多くなるでしょう。治療をするということは、その先に子育てしながら働くことが待っているわけで、その状況でもしっかり仕事と向き合っていけるのか、ということを今の段階から評価しておくべきだと思うのです。

もしそれでも残るべき職場があるとしたら、我慢してでも残りたいロイヤルティがあるか、ものすごーい高給か、出産したもの勝ちのワーキングマザーにだけは超優しい職場、くらいではないでしょうか。

不妊治療をするような人たちは基本的に仕事ができる女性が多い

今の職場で働きながら治療を続けたいという方は、諦めずにそれくらいのチャレンジをしてみても良い気がします。なぜなら、今不妊治療と向き合っている女性の多くは、基本的にすごく仕事のできる方が多いと感じるからです。

  • 20代でものすごく仕事をしてスキルが高い方
  • 責任感が強くてストレスを受けやすい方
  • 周りのフォローのために気を張っているような方
  • 自分を過小評価する傾向にある方

性格的にものすごくしっかりされている方ばかりです。だから、自信をもって、一人で抱え込まず、職場を巻き込んで納得できるように治療に向き合って欲しい。こんなに頑張っている人たちが、周囲に隠れて辛い思いをするような文化は変えるべきではないでしょうか?

昔ワーママが声を上げたように、そういう世の中の流れを自分たちが作っていかないといけないし、不妊治療だけじゃなく、いろんな事情を抱える人が会社に迷惑をかけられないと忖度して仕事を辞めなくても済むような社会になってほしい、そう願っています。

もちろん、本当に望ましいのは正社員でもフルタイムだけじゃなくて勤務体系や労働時間が多様化すること。でも時間は待ってくれませんから、自分のできる精一杯をやっていくしかないのかなと思います。私も、今年は治療に主軸を置いて、これでも無理だと思うまでは6~7割のパワーで仕事を続けていきたいと思っています。